死とアイドル

月曜日

私は帰宅するなりグースカと眠った。別段疲れていたわけでもないのだがたまらなく眠たかった。携帯の着信音で目が覚めた。午後9時。母は静かに、母方の祖母が亡くなったと告げた。寝ぼけた頭で「あら、そうなんだ」と返した。私は喪服を持っていないから、スーツで代用するという話をした。
電話を切り、手癖でツイッターを開いた。荒れていた。ハロー!プロジェクトの新体制についての動画が上がっていた。すぐに見た。カントリー・ガールズが本当に解体されてしまうのだという事実も、Juice=Juiceがオリジナルメンバーでなくなる衝撃も、森戸さんと譜久村さんの繊細な緊張感も。なにもかものやるせなさに唖然とした。アンジュルムのファンをやっている自分としては、あいあいを元のメンバーのままで待っていられないことが口惜しかった。それでもあやちょの神々しさすらある慈愛に包まれて、絶望はしなかった。衝動的な物言いを制御できる程度にはハローとの距離があった。
寝ぼけていたとはいえ、母に「あら、そうなんだ」などと言ってしまったことを後悔し始めていた。スマホで喪服について検索し、やはり新しく購入することにした。値段の相場を調べて顔が青ざめた。
 
火曜日
仕事終わりに汗だくで百貨店へ駆け込む。催事場でバーゲンをやっているとのことだったが、午後6時で終了していた。二軒目で勇気を振り絞りフォーマルウェアの売り場に入る。破滅的なコミュ障ゆえひとりで買い物をするのが本当に本当に苦手だ。増して喪服の良し悪しなど到底わからぬ。二着ぽっちを試着し、高い方は細すぎてパツパツだったので、6万ほどのアンサンブルと1万のバッグを購入。6万!この真っ黒なだけの服に6万!ボーナスが近くて助かった。店員と話すのもしどろもどろに、そそくさと帰宅。桃子さんのラストコンサートのライブビューイングにけないかもしれない、ということにやっと思い至る。
 
水曜日
テレ東音楽祭のためそそくさと帰宅。堂本の剛さんが一週間入院というニュースのほかは、極めて平和的に進行された。大型音楽番組になると、やはりベテラン勢の強みが光る。V6おじさんたちの容赦のないカッコよさに殴られた。SMAP解散後の世界で、中年アイドルたちはいったいどこへゴールを目指すのだろう。男性アイドルの終末のモデルケースを誰が作るのだろう。ジャニーズファン目下の懸念事案が改めて過る。
 
木曜日
どうやら桃子さんのライブビューイングに行くことができるだろうという見通しが立つ。ハロステを見るなどして、駆け込みで研鑽を積むつもりであったがたちまち寝落ちする。
 
金曜日
時間休を取得している私に先輩が「今からおばあちゃん家に行くの?」と心配してくださったが、「いいえ、ももちのライブを見てきます」と宣言してそそくさと職場を出る。
桃子さんのラストコンサートは完璧だった。無論、アイドルというのは完璧なだけが美しいものではない。誰もが承知している。それでも桃子さんは完璧を目指し、そして見事なまでに達成した。それを可能にしたのは桃子さん自身の輝かしく逞ましい、ダイヤモンドの如き意志であることは言うまでもないが、カントリー・ガールズのメンバーたちの献身ぶりは見事であった。カントリー・ガールズという場の愛と幸福の純度が高すぎてくらくらした。なんとなく勝手に、ももちイズムという言葉が独り歩きしているように感じていたが決してそうではない。カントリー・ガールズで、桃子さんの慈愛を受けて育った者にしか宿せない精神がたしかに彼女たちのなかに遺っていた。
ターミネーター2のラストシーンを思わせる幕引きで、自らの小指を折ることによって、桃子さんはアイドル嗣永桃子をまさに葬り去った。おしなべてアイドルのラストコンサートというものは葬列と同義であるが、桃子さんの最期はそれをいっそう強く印象付けた。ひとりの偉大なアイドルが死んだ。
私はといえば救いようがないことに、アイドルの世界に対して余所者で居なければならないという決意をさらに固くしていた。救いようがないほど臆病な人間なのだ。心を尽くして愛したアイドルがいつか死んでしまったときのことを想像すると、それだけで張り裂けそうに痛いのだ。それならば初めから好きになりすぎないほうが良いのだ。私はその方法を知っている。
 
土曜日
祖母の葬儀に出た。通夜も省略した、近しい親族だけの葬儀だった。本当に唐突な死だった。一人暮らしで家のことは全部自分でやっていた。誰よりも元気で足腰が強く、80を超えてもグアムでスキューバダイビングをするなどの破天荒ぶり。とびきり明るく矍鑠としていて、大雑把かつ几帳面だった。料理がとびきり上手で、どんなものも自己流においしく作ってくれた。合唱、ピアノ、茶道、華道、書道となんでも並大抵でない腕前だった。
たっぷりの花で飾られた祭壇を見て、なぜだかSMAPの最期の光景を重ねてしまう。SMAPの死は私たちアイドルファンに絶望をもたらした。しかしSMAPが死んでも、彼らの与えてくれたものが虚無になるわけではないということを、今となっては無条件に信じている。死の結末によって人生の価値を定めてはならない、という考えを心にうかべた。自宅で倒れているのを発見された祖母は実際のところ孤独死であったわけだが、だからといって祖母の人生を哀れなものだなんて言えるはずもない。祖母は幸福であった。だから私は必要以上に悲しむことはしなかった。ただ、祖母は苦しんだのだろうかと思うと涙が流れた。
従姉が自宅からハムスターを連れてきていた。あまりにかわいく愛おしいので飼いたいと思ったが、きっと飼うことはない。つくづく救いようがない。
 
日曜日
形見分けをした。仕立の良い着物類は全て並べるとまるで呉服店のようであったし、何度も賞を受けた緻密な書作品は装丁からこだわって美しいものばかりで、祖母の心豊かな生活ぶりに圧倒されるばかりだった。そしてそれらの品はもちろんのこと、食器やインテリアや果ては食べかけの食品の類に関してまで、なんでも競りにかけられ分配された。孫の中では祖母と最も疎遠であった私はその光景をぼうやり見ていたが、母の勧めで帯を一本(着物は背丈が合わなかった)、イヤリングを二組、シャネルのNo.5の小さな瓶、数珠などを得た。私以外の誰もが祖母の遺品をそばに置いておきたがった。それはひとえに祖母の人徳ゆえだった。
それでも、どうにもならないこともある。一人暮らしの祖母が亡くなったということは、祖母の家に暮らす人がいなくなったということだ。家をどうするか未だ決まっていないが、いずれにせよ取り壊さなければならないことは確実だった。実家をなくした母や、誰よりも祖母と近しくしていた兄の、茫然とした表情を見た。ただ物質的な家がなくなるということだけでなく、関東と中部と近畿と中国と、離れて暮らす親類たちの集まる空間と口実が、すっかり失われてしまうのである。
カントリー・ガールズの解体のことを想う。アイドル嗣永桃子の死とともに、カントリー・ガールズはほとんど決定的に失われてしまった。それも仕方なしにというわけでなく、大きな力の干渉によって無理に奪われてしまったのである。ひたむきな少女たちにとってなんと残酷な仕打ちだろう。どこへ居ても何年経っても、彼女たち5人にとって還るべき家はたったひとつだけだというのに。完璧な桃子さんの唯一にして最大の誤算であった。
帰阪し、ずっと心待ちにしていた関西ジャニーズJrのラジオを聴いた。大晴くんと晴太郎の初ラジオ。2人と道枝くんの会話はあまりに若くて、痛々しいほどにまぶしかった。でもそのきらめきだけでアイドルは生きてゆけないのだと、彼ら自身も知っている。関西ジャニーズJrは常に死を意識せざるをえない集団だ。こうして彼らの与える幸福に浸っている間にも、自分がいかに死ぬかということを考えている子が居るのだろう。
結局のところどんな屁理屈をこねたって、死に際が全てではないと悟っていたって、誰もがきっとすべて綺麗に死にたいと願っている。どうしようもなく。無謀に。願っているのに、それを完遂できるアイドルは、人間は、きっと宇宙のどこにも見当たらない。

拝啓、自担様(4) 溢れる涙は紙一重

拝啓、中島裕翔様。

 

さようなら、さようなら!

22歳のあなたがどんなに美しかったか、わたしはきっと生涯忘れ得ないでしょう。

 

(欠落している(3)については、どうかお察しください。)

 

あなたのことは、ジャニーズの世界に足を踏み入れて間もなく好きになりました。

両A面シングルだった『ウィークエンダー』と『明日へのYELL』が披露されたテレビ番組を見て、前者の良曲っぷりにすっかり虜になりヘビロテ、あまりの幼さにデビュー当時は嫌悪感すら抱いていた(とはいえ完全に同年代なのですが)Hey!Say!JUMPの成長っぷりに驚いて、メンバー全員の顔と名前を一致させるのに時間はかかりませんでした。

そして後者の曲で背の高い金髪の、ジャニーズらしからぬ垢抜けた青年がセンターにいるのを見て、なるほどこういう今っぽい軽めの洒落っ気のある子が推される時代なのかと感心した、その彼こそあなた、中島裕翔りんでした。やがて見かけたファンブログであなたが経てきた紆余曲折を知り、漏れなく胸を打たれました。そして、今どきの若者に見えたあなたがとても真面目で古風な性格で、とても育ちが良く上品で、普段は高雅な黒髪であることも知りました。物語性をふんだんに含んだアイドル楽曲に目がなく、そしてすこし浮世離れしたハンサムが大好物なわたしは、たちまち裕翔りんのことを好きになりました。

それからおおよそ半年、ジャニーズWESTを追いながらも、共演の機会も多かったHey!Say!JUMPと裕翔りんのことは常に気にかけ、応援していました。けれども、一番の推し、担当にしようなどという気持ちはまったくありませんでした。わたしのような根性のひねくれた人間の場合、裕翔りんのようなまっすぐ無条件に美しい王道アイドルのことを純粋な心持ちで愛でることはできないだろうと感じていたからで、裕翔りんの担当になること自体に憧れすら抱いていたその心境を「来世で自担にしたい」などという意味不明な言葉で表明するなどしていました。

 

けれども結果的に、わたしはとても来世まで待つことなんてできませんでした。

2015年の夏、Hey!Say!JUMPはV6とともに24時間テレビのメインパーソナリティーとなり、メンバーがとっかえひっかえ番宣に出演していました。この時期WESTの活動がめっきり無かったことから、この夏はJUMPに楽しませてもらおうと決めて彼らの仕事を追っていました。見るたびに裕翔りんとJUMPのことが好きになり、やっぱりたまには王道アイドルも新鮮で楽しいなあ、なんて悠長に考えていた、その矢先のことです。

2015年8月16日放送の「おしゃれイズム」に裕翔りんが出演しました。そのときには録画しながらリアルタイムで番組を見るほどには既に裕翔りんを好きになっていましたが、その期待をすっかり打ちのめすほど、この番組には裕翔りんの魅力がこれでもかと惜しげもなく、かつ優しくみずみずしく詰め込まれていました。裕翔りんは山田さんからのリークを受けて、愉快なカメラマンさんのモノマネを披露しました。カメラマンさんの普段のクールな様子と、アイドルらしい写真を撮るときのハチャメチャなテンションのギャップを演じわけ、そのモノマネが(珍しく)うけて、嬉しそうに椅子に座りなおす、そのわずか10数秒のできごとを見たわたしは、覚悟を決めざるを得ませんでした。今、この人の美しさを見逃してはならないという強い確信がそこにありました。

そんな22歳になったばかりのあなた、わたしのような人間が愛するにはもったいないほどに美しく、可憐で、清廉なあなたにすっかり惚れこんでから、ほどなく1年が経とうとしています。

 

あなたのお顔が好きです。

日毎に美しくなりなさる、その美貌のすばらしさを挙げるならきりがなく、なにかに例えるとするならわたしのことばではとても足りません。清らかで端麗な造形は常にもの思いを含ませ、それでいてきっぱりと変化する表情の強烈な陽、その対比のみごとなことといったら!これはネットでお見かけしたことばの受け売りですが、わたしは裕翔りんのお顔が好きであること以上に、裕翔りんのお顔が美しいこと、それが多くの人に称賛されることをなによりも愛しています。ひと目見れば裕翔りんの性質を知ることができるその普遍的かつ奇跡的な優美が、中島裕翔というアイドルの盾となり矛となって世界と戦い、すこしずつですが勝利を収めていく今このときを、同じ時代に生き目撃できることに感謝してやみません。

 

あなたの歌声が好きです。

はじめて『明日へのYELL』のソロパートを聴いたとき、大好きな藤井隆さんの歌声に似ていると思いました。実際はわたしの欲目であってそう似ているというわけでもないのですが、あまり技巧的でないまっすぐな歌唱、ややかすれた柔らかくマットな声質、素直で淡泊な発音などが共通しています。それらは今までわたしがその歌声を愛してきた人たち(堂珍嘉邦堀込泰行中間淳太ら)にも一貫している特徴であり、わたしが男性の歌声に対して持っている強迫的なフェチズムなのですが。裕翔りんの歌唱はこの1年の間にもみるみる成長していますが、歌声のはらむ育ちの良さ、上品さは変わらないままで、とても嬉しく感じています。

 

あなたの物語が好きです。

圧倒的エリートとして過ごしたジュニア時代、デビュー2曲目に突然センターを降ろされてからの6年にもわたる不遇、多感な思春期における不器用で繊細な情動、苦悩のなかで見出した活路、メンバーとの確執と和解とその狭間。アイドルファンなら誰もが涙せずにいられないその物語は、2014年の鮮やかなるセンターへの返り咲きによって完結しました。それは同時にHey!Say!JUMPというグループの、長い長い第1章の終わりでもありました。

絵画史を学んでいたことがあるので、ついつい考えてしまうことなのですが、アイドルアイドルを愛でることはまるで絵画を鑑賞する態度とそっくり同じです。

絵画は(ひいては、あらゆる分野の芸術は)、その物質としての表面のみを見てももちろんじゅうぶんに楽しむことができます。しかしながら、その絵画の持つ物語――画家の人生、歴史的背景、モチーフの意義、周辺画家との関わり、着想源、手法的な特徴といった要素たち――を理解することで、その絵画の魅力をより多面的に評価できるようになるのです(無論それも芸術鑑賞の手段のひとつに過ぎませんが)。そして、わたしたちがけっして知り得ぬ真実への誘惑と、それをめぐって繰り広げられる不毛で愉快な議論それ自体の喜び苦しみもまた、アイドルに絵画性を感じる理由です。

そう、わたしが裕翔りんを好きになったのは、新たに第2章がはじまってからのことです。山田涼介と中島裕翔の緊張関係という支配軸を失ったHey!Say!JUMPは、新たな物語を紡ぎ始めました。――しかしながら、22歳の裕翔りんを愛していたとき、わたしの頭の中にあなたの過去のことはほとんど去来しませんでした。そう、あの『ピンクとグレー』のときですら。わたしはこの1年間、あなたの物語を常に心に留めつつも、あなたという絵画に相対するときには、表面的な美しさにほとんど集中することにしていました(不完全ではありますが、なるべくそうしました)。

わたしがそのような方法で鑑賞したいと考えてきた画家のひとりが、わたしがこの世でいちばん愛する画家、エドゥアール・マネです。裕翔りんのことを見つめるとき、マネの作品に想いを馳せることがしばしばあります。近代絵画の父と呼ばれる彼は、その意味で歴史的英雄ではありますが、彼自身が描く作品はきわめて上品な感性によってヒロイズムが抑制されており、それこそが彼の生みだした新しい美のかたちでありました。

随分話が逸れてしまいましたが、ともかくわたしはこの1年間、あなたというジャニーズ内でも非常に強烈な物語性アイドルを、つとめて非物語的な方法で鑑賞してきたのです。それはとても新鮮な体験で、おそらくあなたの過去にも未来にもない、貴重な期間であったのだと思います。22歳のあなたを見逃してはならないと直感したのは、結果的にではありますが、正しかったと今になって断言できます。しかし今のわたしは同時に、その季節の終わりを意識せずにいられません。まだ見当はつきませんが、わたしがあなたを鑑賞する態度を変えなければならない日は、そう遠くないことを予感しています。

 

さて、マネがその作品に表出させた絵画の近代性はもうひとつあり、それは「理想的な表現だけが美しさではない」とする考えかたでした。

それに準ずるというわけでもありませんが、わたしはあなたに、中島裕翔というアイドルに、こうあってほしいという理想を願うことはきっとないでしょう。わたしの身勝手でわがままな理想など、あなたの抱く大いなる美を前にしては、なんの意味も持ちませんから。

あなたがどんなアイドルであろうと、なにを考え、なにを表現しようと、わたしはただ祈るのみです。あなたが変わらず、ますます美しいことを、そして、あなたの美しさがより多くの人に祝福されることを、あなたのことを思うたびに祈ります。わたしにとっては、その敬虔な祈りこそが、あなたへの残酷な欲望そのものなのです。

 

はじめまして、ありがとう。

23歳のあなたが美しくあらんことを。

 

 

かしこ

「光を抱きしめて」なお慕わしいあなたのファンより

拝啓、自担様(2) 願うだけのその夢よりも

 

拝啓、西畑大吾様。

自分でもあきれるほど、あなたのことを信じています。

 


Berryz工房を好きになり、アイドルの世界に足を踏み入れたわたしでしたが、他のグループに強い関心が湧くわけでもなく、近づいてきた卒論への憂鬱を動画巡りで有耶無耶にする日々。

それはあまりにも突然の、まったく偶然のできごとでした。

 

2014年の10月ころ、活動休止中のCHEMISTRYの近況が気になり、川畑要さんの名前で動画の検索をかけました。そこで2、3番目あたりの候補として出てきたのが、「まいど!ジャーニィ~」という番組に川畑さんがゲスト出演したときの動画でした。

ジャニオタ内ではあまりにも有名なこのバラエティー番組、当時は関西ジャニーズJr.の若手6人(向井康二、金内柊真、平野紫耀、西畑大吾、永瀬廉、大西流星)がMCを務めており、川畑さんが出演したのは2014年6月8日の放送でした。

イマドキのジャニーズJr.は単独番組も持っているのかあ……と遠い目をしながら、当時20歳~12歳という若さだった6人の、現代っ子らしくゆるい喋りにははらはらさせられました。CHEMISTRY時代から非常に安定感のある川畑さんのトークはとても聞きやすく、川畑さんはソロになってますます色っぽくなり、番組ラストで披露した歌唱はこちらが誇らしくなってしまうほど絶品でした(最も印象に残った回を挙げるまいジャニ大賞2014でも、向井くんがノミネートしてくれました)。

 

しかしわたしは間もなく、気がついてしまったのです。

なよっちいジャニーズJr.6人組の中に、ジャニーズらしからぬ硬派な黒髪短髪の男の子がひとり、いたのです。しかもお顔だちもくっきりと濃いめで、目がくりっと大きく、八重歯がかわいらしい、驚くほどわたし好みの美少年ではありませんか!

そうです、それが朝ドラ「ごちそうさん」出演直後でまだ髪が伸びきっていない、いわゆる坊主期の西畑大吾さん、あなたでした。

 

大吾ちゅんの容姿にひと目惚れして、まいジャニの他の動画も見始めました。リアルではもちろんのこと、ツイッターの二次元用アカウントでも、あの散々バカにしてきたジャニーズにはまっているなんて恥ずかしくて、しばらくは明かせませんでした。

憎むべきジャニーズの襟足を持たない硬派さに惹かれたものの、大吾ちゅんも普段はフワフワ襟足のきゅるきゅる系アイドルであることはすぐにわかりました。今でこそぐっと大人びた男性になられましたが、当時17歳のあなたといったらまるで中学1年生にしか見えず、小瀧望ちゃんや平野さん、金内さんと同い年だと知ったときはほんとうに信じられなくて、実年齢に慣れるまでにしばらく時間がかかったほどです。ステージでは全力で踊り、過剰なほどカメラアピールをする姿がほほえましく、でも性格はリアリストでオタク気質なところも、とても好みでした。

いっぽうで番組を見渡してみると、6人のMCはあまりにも未熟で、関西らしく笑いを取ろうとする姿勢が余計に痛々しくて。番組の最後にあるステージも到底できが良いとはいえなくて、ジャニーズJr.というものに対して抱いていたなんとなくのイメージ(チャラチャラしていて、子供っぽくて、軽薄で、あまり苦労していなさそう)からあまり外れない印象を受けました。

 

それなのに、わたしはいつの間にか心から楽しんで彼らのMCを見守るようになりました。そのきっかけを正確に思い出すことができませんが、とりわけ2014年4月13日放送回が誰にとっても重要だったのは間違いありません。

2014年の年明けにCDデビューを発表したジャニーズWESTのメンバーへ、後輩であるまいジャニメンバーがそれぞれ感謝の手紙を読み上げる企画。わたしはジャニーズWESTのメンバーすら誰ひとり知らない状態でしたが、見るからにまいジャニメンバーとはアイドルとして格の違う、堂々たる先輩たちでした。彼らを送り出すために、6人が号泣したり、なんとか堪えたりしながら手紙を読み上げるさまは、まさに彼らが関西Jr.のトップを継承しようとする感動的な場面でした。その言葉はあどけなくて、拙くて、思わず笑ってしまうようなものばかりでしたが、先輩の意志を汲み、必死に自立しようと背伸びする後輩たちの物語が、まざまざとありました。関西Jr.がひとつの大きなまとまりとして歴史を繋いでゆくさまは、まさに伝統芸能のようで(それはどこかハロー!プロジェクトの形態に似ていて)、この頼りなげな少年たちが背負ってゆくものの壮大さに、涙せずにはいられないのでした。

 

その物語を知ったうえで見る関西ジャニーズJr.のステージは、あらゆるジャニーズのパフォーマンスのなかでも最もエモーショナルな瞬間が詰まっています。なかでも2014年1月8日放送のザ少年倶楽部で披露された、現ジャニーズWESTメンバーとまいジャニメンバーの総勢13人による『Next Stage』は、関西Jr.に渦巻くあらゆる事象が爆発した、最高傑作のひとつでした。

明日をも知れぬジャニーズJr.たちがガツガツとしたパフォーマンスに乗せて歌う、「僕を信じて」「君の声聴こえてる」という歌詞の絶望的な輝きといったら!ファンにとっては、ジャニーズJr.という存在のはかなさを理解していながらも、そう歌う彼らに期待を抱かずにはいられない残酷さ。ジャニーズJr.たちにとっては、見知らぬ他人のさまざまな希望を背負っているのだということを、否が応でも自覚させられる苛酷さ。胸を掻き毟られるように苦しくて、美しい歌詞です。

 

アイドル、なかでもジャニーズやハロプロのような大手老舗の若手アイドルたちは、たしかに本人たちの実力とは必ずしも関係なく、大人たちの采配によってスターに押し上げられたり、逆にその座から降ろされたりするか弱い存在です。それなのに多くのメディアに出たり、無条件にちやほやされたりしますので、苦労していなさそうと勘違いされることも少なくありません(「苦労」を感じずにトップになるアイドルだっていますが)。

でも彼らが無力で、ちっぽけな少年少女であるほどに、彼らが重たく長い歴史や、大衆の欲望と嫉妬や、郷里や世界といったものを一身に受けとめようともがく姿の健気さに、わたしたちは浅はかにも感涙するのだと気づき、わたしはまたしてもアイドルファンの罪深さをひとつ数えました。Berryz工房によってアイドルの世界に導かれたわたしは、関西ジャニーズJr.を通して、アイドルというシステムそのものに魅了されてしまったのです。

 

さて、ジャニーズWESTのデビューをめぐり急激に移り変わる関西Jr.のなかで、西畑大吾というアイドルは至極静かに存在し続けました。わたしが彼らを見始めたのは、ちょうど平野さんと永瀬くんが東京に進出し始め、大吾ちゅんは堂本光一さんの舞台『endless SHOCK』出演という大役に選ばれたころでした。そんな激動の状況にありながらも、わたしがあなたから目を離すことができたのは、「今後彼らにどんなことがあっても、大吾ちゅんだけは絶対に大丈夫」という全幅の信頼があったからです。弱冠17歳のいちジャニーズJr.に対してそのような期待を寄せるのはとても危険なことだと、今になってわかりますが、でも、それを裏切られたことはこの2年間いちどだってありませんでした。

誰もがすぐにわかるとおり、大吾ちゅんは非常に聡明で、精神的に安定しており、尽きることのない情熱を持ったアイドルです。人情家でありながら、表面的には決して揺らぐことなく、フラットに周囲の変化を見つめ、かつしたたかに自らを高めてゆきました。そして、目を離していたにもかかわらず無責任にこう表現することを許していただきたいのですが、ふと気がつけば関西Jr.のセンターに君臨していました。

大吾ちゅんのような才能ある人が、人目につきやすいポジションにいることは、とても望ましく嬉しいことです。しかも、あなたには関西ジャニーズJr.という巨大かつ特殊な集団をまとめ上げることのできる器量が万全に備わっています(言うまでもなく、ひとりの力ではありませんが)。最近では立て続けに映画出演が決まり、事務所も積極的に盛り立ててくれます。しかしJr.たるもの、その立ち位置になにが起こっても不思議ではありません。大吾ちゅん自身もまだまだ成長途上にあり、アイドルとして完成形に至るまでには長い時間がかかることでしょう。それでも、現体制になって初めての新曲『Dream Catcher』で、その強い瞳でもって前を見据えるあなたなら、絶対にすべてを成し遂げてくれるだろうと、信じてやみません。

いわば大吾ちゅんにひと目惚れをしたせいで、数年前のわたしには到底信じがたいジャニオタという現状にあるわけですが、それを後悔せずに済んでいるのもまた、あなたのおかげです。あなたの活躍を見るたびに、「わたしをジャニーズに陥れた男は、こんなにも立派なアイドルなのだ!」と、誇らしくなるのです。その身勝手で重い欲望を注いでも、あなたはすっかり飲み干してなお爽やかに、高みを目指してくれるに違いありませんから。

 

「生まれたてのこれからを信じて」と歌うあなたへ、わたしは未来永劫、絶望的に期待し続けることでしょう。きっとこれから目にするたくさんの人たちのなかでも、わたしにとってあなたは世界でいちばん信頼すべきアイドルなのです。

 

かしこ

「一度だけの夜明け」を祈るあなたのファンより

拝啓、永久のお姫さま ◇ 私の本当の意味を知りたい

 

自担と呼ぶのもおそれ多い。

ただ今まで出会った誰よりも、特別な女の子でした。

 

 


高校時代をほとんどCHEMISTRYに捧げたわたしは、大学に入り、実家を出てまもなく彼らから離れ、すっかりネット世界の住人になりました。家族の目を気にせずアニメ三昧、二次創作作品を読み漁り、ときおり文章をとっ散らかす日々。

いっぽう音楽方面では、CHEMISTRYと関わりのあった冨田ラボから辿って、ようやくほんのすこしだけ許容範囲を広げます。とりわけキリンジの音楽世界に傾倒していました。


以前の記事で触れたように、キリンジSMAPに曲提供していたことや、名曲『Sexy.Honey.Bunny!』にハマったことがきっかけでアイドル音楽を少し見直したところがありましたが、依然としてアイドル文化そのものに対しての興味はほぼありませんでした。

 

 

あの夏、2014年の夏。わたしはツイッターのフォロワーさんを介して「スターバースト!」というヴァーチャルアイドル企画に注目し始めました。

16人のキャラクターがアイドル候補生として、ファンからの人気投票によりデビューを争うもの。まるでリアルタイムに活動を行っているかのようなツイートを発信することで、アイドルたちの成長や変化に感情移入させる点では、「うたの☆プリンスさまっ♪」のツイッター活動(いわゆる「プリツイ」)の後追いで生まれた多くのヴァーチャルアイドルコンテンツのひとつでした。ただこのコンテンツで特徴的だったのは、規模の小さい手作り感からくる妙に三次元的な生々しさで、そのせいかファンのツイッターやブログを追ってゆくと、リアルアイドルと比較した言論がとても目立ちました。(ちなみに佐藤勝利さんのお名前なども「スターバースト!」ファンのブログで知りました。)

 

 

そして、あの日。

2014年8月2日未明のことです。

 

わたしは実家のベッドに横たわりながら「イナズマイレブン」などで繋がった大好きなフォロワーさんと、アイドルについてのツイートを交わしていました。

このフォロワーさんはかねてからBerryz工房の大ファンで、わたしはそのことをよく知っていたので、ここぞとばかりに「スターバースト!」で得た浅はかすぎるアイドル理論を口にしていました。彼女はリアルアイドルの儚さや残酷さについて、優しく諭すようにお話しくださったと記憶しています。

まさかその夜が明けたら、Berryz工房の無期限活動休止が発表されるとも知らず。

 

フォロワーさんの落ち込みっぷりは心に迫るものがありました。わたしはもちろん「イナズマイレブン」で彼女たちの曲を知っていて、アニメの荒唐無稽さとマッチした熱くてトンチキな曲たちはとても好きでしたが、当時ちょうど絶賛ギャル期であった彼女たち自身への興味はまるでありませんでした。しかし、わたしはそのフォロワーさんのセンスをとても信頼していましたから、その人がこんなにも入れ込むグループとは、いったいどういうアイドルなのだろうと、Youtubeを開きました。

あなたがたのことを最初どう感じていたのか、あまり正確な記憶がありませんが、驚いたのは、歌が上手いこと。容姿が華やかで個性的なこと。楽曲が魅力的なこと。

たしか最初に見たMVは『Rockエロティック』で、熊井ちゃんの男役の似合いっぷりと、雅ちゃんの華やかな艶に惹かれました。次の動画をクリックする手が止まりませんでした。『1億3千万総ダイエット王国』でつんく楽曲の真髄を見せつけられ、『cha cha SING』でアイドルを見る多幸感というものに気づき、『あなたなしでは生きてゆけない』で変態的なエモさに涙し、『ロマンスを語って』で愛に満ちた優しすぎる幕引きに嗚咽しました。

就職がようやく決まり、なんとなく社会に出ることが憂鬱なモラトリアム期末、同年代の彼女たちの圧倒的な「強さ」に、あっというまに惹きこまれてゆきました。

 

 

かつてのわたしのような、アイドル文化と疎遠な人種がたいてい抱いているのは、「どうしてアイドルという職業を特別に思うのだろう」という疑念だろうと思われます。歌だってダンスだって、いくら上達しても専業のプロフェッショナルには敵いません。顔だって、整っていて万人受けするという点で見れば俳優だったりモデルのような職業の人たちのほうがずっと平均値が高いでしょう。一流のシンガーソングライターや声優にも、顔の綺麗さに人気を後押しされる人は珍しくありません。さらにいえば二次元キャラクターの見た目や性格は人工物ですから、より完璧に人の理想に沿うことが容易です。それでもなお、生身のアイドルがとても多くの人の心を掴むのが、ずっと不思議で、不可解なことでした。その真理のひとつを、Berryz工房はわたしに啓示してくださいました。

それは「物語と音楽の融合」。あまりに初歩的ですが、アイドル文化弱者(たるわたし)は、このあたりまえのことにすら気がついていないものなのです。

あんなにも幼くして芸能界にひきずり込まれた頼りなげな少女たちが、青春のすべてをアイドルに捧げ、わがままにマイペースににぎやかに、ついにはそれぞれ個性的ながらも美しく強く成長していく、予測不可能な、一度きりの、ただひとつの物語。ひとりひとりに寄り添いながらも唯一の感性で伝えてくれる、なおかつアイドルという存在にしか表現しえない、つんく♂さんのすばらしい楽曲群。それらの融合(あるいは反発)によって生まれる、奇跡的としか言いようのない輝きこそがBerryz工房の、ハロー!プロジェクトの、ひいてはアイドルというコンテンツの本質的な魅力だったのだと。

 

 

そんなBerryz工房の物語と音楽を象徴する存在、それが最年少センターである菅谷梨沙子ちゃんでした。デビュー当時9歳ですでにお人形さんのように完成されたかわいらしさはそのままに、お化粧や髪型は、しだいに自分らしく、王道アイドルらしからぬ現代性とはでやかさを追求してゆきました。ハスキーで素朴な歌声は、やがてハロプロで最もソウルフルな低音へと進化してゆきました。

正直なところ、わたしが梨沙子ちゃんについて語れるのはこれくらいの表面的なもので、ちっとも梨沙子ちゃんのことを知りません。梨沙子ちゃんがどういう性格なのか。なにが好きなのか。なにを信念としているのか。ラストコンサートの最後の挨拶で「全部投げ出してどこかへいってしまいたいと思ったこともいっぱいありました。」と言った梨沙子ちゃんが、こんなにも長い間、どんな気持ちでアイドルを続けていたのか、なんて。

 

それでもわたしが梨沙子ちゃんを特別だと思うのは、梨沙子ちゃんが特別にかわいらしい、みんなに愛されるべきお姫さまだっただけではなく、勝手に押しつけられる枠組みのなかで苦しみながらも、どこまでも自分を高め、自分の信じるものをまっすぐに表現していく、勇気あるお姫さまだったからです。それは、梨沙子ちゃんのことを知らなくても、梨沙子ちゃんの歌い踊る姿を見ていれば、梨沙子ちゃんのお化粧や髪形を見ていれば、誰でもすぐにわかることです。姿かたちとパフォーマンスのみによって物語を語り得ること、それがアイドル菅谷梨沙子ちゃんの才能であり、努力であり、とてもとても特別な理由なのです。

不器用で繊細で優しい女の子が、全部投げ出したくなるほどのさまざまな理不尽と10年以上も戦い続け、ついには勝利を得る。『愛はいつも君の中に』で「さあ笑え いざ挑め」と、誇らしげな笑みを湛えてセンターに君臨する梨沙子ちゃんが、とてもとても好きでした。

 

 

こうして、20代にもなってやっとアイドルの魅力というものを理解できたわたしは同時に、アイドルファンという存在のあまりの残酷さに、深く深く絶望しました。長きにわたって生命ある人間の(とりわけ美しい人たちの)人生を浪費させ、その肉体と精神を削らせてなお、一方的かつ身勝手な言動のもとに晒し続ける、その生々しい無限の欲望。でも、その罪深さに気がついたときには、わたしはもうとっくに抜け出せないところにいました。だって、世界が残酷なほど、わたしたちの欲望が醜く執念深いほど、アイドルたちは強く美しく、輝いて見えるものだということを知ってしまったからです!ほかでもないBerryz工房と、梨沙子ちゃんによって!

 

アイドルという文化の見方すらわからなかったわたしに、アイドルの魅力も楽しさも恐ろしさも、まさしくアイドルのすべてを教えてくれたのが、Berryz工房菅谷梨沙子ちゃんでした。ほんのわずかでも、彼女たちがアイドルしている時間を目撃できたことは、わたしの大切な宝物です。無期限活動休止したBerryz工房は永久の夢となって、いつまでもわたしたちを魅了し続けてくれます。

けれど、Berryz工房の時間が止まっても、ひとりひとりの女の子たちの物語はずっと続いています。最近では梨沙子ちゃんも、SNSでの活動を再開してくれましたね。いつかまた、永久のお姫さまが、音楽の世界に戻ってきてくださる日を楽しみに生きています。

 

かしこ

「初恋を最後の恋と」した、あなたのファンより

 

魂ひとつで/田村芽実ちゃん卒業公演ライブビューイングレポート

 

別名「1年半前から突然アイドルにはまり普段はジャニーズ中心でハロプロデビュー組に名前のわからない子がいて生で見たことあるのはリリイベ一度だけの超絶にわか茶の間ファン(20代喪女)がはじめてのハロプロライブビューイングにぼっち参戦してきたよの巻」。

ちなみに初めて行ったリリイベはこないだの「次々続々/糸島Distance/恋ならとっくに始まってる」だし、ジャニーズ中心とか言いながらジャニーズのコンサートには一度も行ったことがない、正真正銘純粋培養の茶の間ファンです。

ほんとうはリリイベの感想も書こうと思っていたのに気づいたらもうこんな感じになってしまっていたので、ちょこっとだけそのへんも混じってます。

 

わたしをアイドルの世界に導いてくれたBerryz工房が活動休止してからというもの、その心の穴を愛らしい笑顔とキレまくったパフォーマンスで満たしてくれた田村芽実ちゃんの卒業コンサートということで、わたしもなんとか月曜がとりわけ忙しい職場から1時間休をもぎとりライブビューイング会場に駆けつけました。

ものすごいどうでもいい話なんですけど会場の映画館がすごいシャレオツなビルディングに入っていて、待ち時間中所在なげに右往左往するオタクの人たちがかなりいらっしゃって勝手に同士を感じていました。まあそんな中でもどうやら座れるカフェがあったのでそこで開演15分前くらいまで時間をつぶして入場したんですけど、聴こえてくる「ネンネンネンネネンネンネン……」というゆかいなフレーズ……。オープニングアクトのことすっかり忘れてたっていうか初めてだからしらねーよ!!!!せっかくこぶしちゃんのメンバー覚えたてだっていうのによお!!!!!!でも一番最初に覚えた美人さんこと井上玲音ちゃんはいなかったようで残念。

ちなみに座席なんですけど遅れて取ったせいか前から4列目の通路側でかなり見上げる状態。観客は7割くらいペンライト持ってきてて、驚くことに4割くらい女性でした。おひとりさま参戦の女性も結構いたので安心。お友達になりたいけどそんなコミュ力あったらとっくに友達連れてきてる。というかライブビューイングすっごい良くて自分に向いてるなと思いました。基本的に地蔵スタイルだし、コールもあんまりわからないし、なにしろ目が悪くて現場だとちっとも見えないし、ひとりの動きをずっと見ていたいというよりは箱推しだし。かといってDVDとは違ってやっぱりリアルタイムだし、大画面とすばらしい音響でドキュメンタリー映画を見ているような気分になりました。会場のひとたちはペンライト振りは完璧にずっとやってたんですけどコールとかはほとんど聞こえませんでした。でもやっぱりわかる曲ではささやかながらコールもしてみたいという面倒な地蔵なのでその点ではすこし寂しかったかな。隣にはおひとりさまの男性が座ったのでどんな感じなんだろうと思いきやペンライトも降らないしわりといいとこで飲み物買いに行ったりしてたのであまり熱心なかたではなかった模様。残念なようなホッとしたような。もしかしたらもうひとつお隣も女性だったし、女性に挟まれて居心地悪かったのかもしれないな、すまなかった男性。

 

そんな前置きはさておき、厳かにはじまるオープニング映像。とにかくこの映像のセンスが良い。あまりいろいろなアイドルを見てきたわけではありませんが、こんなにクオリティーの高い、それでいてメンバー紹介としても申し分のないオープニング映像ははじめて見ました。水面に絵具を垂らし、メンバーが思い思いのマーブル模様を描いていくようすが幻想的に映し出されます。最後にめいめいがそのマーブル模様を紙にうつしとり、その紙からぽたぽたと水滴が垂れた先には、ANGERMEの文字が浮かび上がります。そして強い逆行のなかメンバーが悠々とステージに現れ、レーザーと電子音によるスタイリッシュな演出とともにリフトアップ、そして最新曲「次々続々」、壮大なロックサウンドの「ドンデンガエシ」。この一連の流れのなんと芸術的なことか!一部の隙なく練り上げられた構成に、息をのむほど圧倒されます。レーザーとリフトアップなんてジャニーズ顔負け、いや、ジャニーズコンサートでもここまで完璧に世界観を造りあげているものは稀です。それなのに、全員、ひとりのこらず、その世界観に負けていないのです。誰が映っても余すところなくかっこよくて、かわいらしくて、憂いも悲しみも飛び越えた、言いようのない感動に襲われます。ハロプロのコンサート映像を見るといつも思うのですが、愛らしい女の子たちが笑顔で(活き活きとした表情で)歌い踊っているさまを見るだけで、どうしてこんなに胸が締めつけられるほどの喜びが湧きあがってくるのでしょう。

「糸島Distance」ではお衣装がぱっかり割れてまたすてきなお衣装。もっぱらの評判ですがほんとうにアンジュルムのお衣装はすてきです。担当スタッフさんの技術、事務所内での注目度はもちろんあるでしょうが、なによりオープニング映像も含め、リーダーあやちょの卓越した審美眼が大きく貢献しているに違いありません*1。その後3曲はベストアルバム特典曲。わたしは初回B盤を購入していたので、「汗かいてカルナバル」「マリオネット37℃」の良曲っぷりは存じておりましたが、なんといってもこのライブでの初見で衝撃的だったのが「カクゴして!」というとびっきりのキラーチューン!スマイレージらしいハイパーキュートポップチューンの流れをくみながら、アンジュルムらしい挑発的な女の子像も併せ持っている最高さ!ぜひライブの定番曲になってほしいです。

続けてスマイレージ曲のターン。なにより盛り上がったのは「プリーズ ミニスカ ポストウーマン!」。バックにはMVも流れて、幼いめいめいにきゅんきゅんしながら、なんてすてきな女性になったんだろうと感激しきり。というかオタクの皆さんにはほんとうに今更な話なんですけど、スマイレージ初期曲はライブがとりわけ楽しい!「夢見る15歳」「有頂天LOVE」なんかは映画館の音圧が良く効いて、ライブビューイングに来てほんとうに良かったなと思いました。

そしてめいめいと3、4期のプリティーで笑顔いっぱいのコーナー。アンジュルムがすごくお得なグループだなと(?)思うのは、アンジュルムになってから力強くてカッコイイ路線に統一されているんですけれど、こうしてスマイレージのカワイイ路線の曲も引き継いでいるところ。3、4期メンバーが王道アイドルらしく歌って踊る姿も見ることができてすごく嬉しいのです。ぎゅっとくっついて楽しそうにはしゃぎながら歌う5人を見てもうオバチャン既に涙腺決壊寸前。のところで初期2期の「スマイルファンタジー」がきて、その神々しさ、尊さに逆に涙が引っ込みました。荘厳で雄大なスケールの世界観は、まさに田村芽実というアイドルにしか成しえないすばらしいステージでした。そして花音ちゃんの卒コンでも感動を呼んだ「交差点」。え、もうここできてしまうの早くない?!と動揺しつつ、花音ちゃんのときにも思いましたけれど、実にアンジュルムメンバーの卒業にふさわしい良い歌詞。メンバーが涙するなか、とびっきりの笑顔でいるめいめいを見て、ついに涙腺崩壊。朦朧としながらエモに浸っていると、めいめいの決然とした台詞からの「恋ならとっくに始まってる」、痺れました。つんくさんはほんとうに最高の曲をプレゼントしてくれましたね。"私もどうなってもいいみたい"なんて好きなアイドルに歌われたら、そりゃあ、心がぐっちゃぐちゃになったって、笑顔で送りださなきゃなって思わずにいられない。

アメリカのMCは彼女たちらしくおっとりしていて愉快で、きっとずーっと友達でいてくれるんだろうなって、ちっとも寂しさを感じさせてくれないところが大好き。続く「私、ちょいとかわいい裏番長」は茶の間にとってあこがれの曲!3期の煽りもとっても良かったけど、最後にお着替えの終わっためいめいが躍り出てきてそのドスの効いた声で場をぐっとさらっていく爽快感といったら!花音ちゃん、めいめいがいなくなって、この曲はどう歌い継がれていくのか楽しみ。その後はアンジュルムのシングル曲の怒涛のメドレー。「大器晩成」はやっぱり会場みんなの心をひとつにしてくれる名曲で、この曲があるかぎりアンジュルムは大丈夫だな、と確信できます。そして多幸感のシャワーの降り注ぐ「スキちゃん」。このあたりはもういろんな感情が駆け巡って意識が朦朧としていましたが、めいめいとあやちょのとびっきりの笑顔がぼんやりと記憶に残っています。メンバーが退場してからは、一面の紫ペンライトの海でめいめいコール。どこか切実にめいめいを呼び続けるオタクたちに、わたしも思わず声を張り上げました。

次に現れためいめいは、濃いオレンジ色に白い水玉のレトロなドレスに、白いリボンのついた麦わらの帽子。とってもかわいくて素敵でした。今まで見かけたことのある卒業ドレスのなかでもひときわセンスが良くて、めいめいらしさがぎゅっと詰まったお衣装でした。そのお衣装で「自転車チリリン」を歌う、いや、演じてみせるめいめい。お手紙もとっても明るくて、のびやかで、たくましくて、かわいらしくて。明日からのことなんて誰もわからないのに、不安であたりまえなのに、「約束させてください」と堂々宣言するめいめいは、ほんとうに意志の強い女の子、わたしの大好きな戦う女の子そのものでした。めいめいは自分のことをなにもできない小さな存在だというけれど、そんないたいけな肉体に魂ひとつ宿して戦える女の子は、世界じゅう探したってそんなにたくさんはいないんだよ。

最後のあいさつで、メンバーがみんな次々に涙してしまって、めいめいがどれだけ愛されたひとだったかというのを実感しました。すばらしい美脚の映えるパンツスタイルに着替えためいめいは、「旅立ちの春がきた」「友よ」でもいつも通り研ぎ澄まされ冴えわたっていて、ちっともしんみりすることなく、軽やかにさわやかに巣立っていきました。わたしにとってBerryz工房のラストコンサートはひとつの聖書でしたが、思いっきり別れを惜しんで泣かせてくれるラストもあれば、こうして笑顔のままに終えてくれるラストもあるのだなあと、改めてアイドルってふしぎな人生ゲームだなあと、思ったり。最後にひとり出てきてくれたときにまで誠実にまっすぐに届けてくれためいめいの言葉は、喪失感以上にわたしたちを勇気づけてくれました。類稀なる鮮烈な才能と、ほとばしるばかりの情熱を持った、ひとりの偉大なアイドルの軌跡の片鱗を、そして彼女を擁したグループのひとつの巨大な完成形を、こうして感じることができて心の底から幸福でした。

 

終演後は目を血走らせながらも楽しさの余韻に口角が上がってしまう不気味な顔面をサラリーマンたちに曝しながらの帰宅でした。「最高」「かわいい」「すばらしい」しか言ってない語彙が貧相なレポートでお恥ずかしながら、メンバーひとりひとりがほんとうに魅力的で書きたいことがいっぱいあるので、最後にざっと連ねて終わりにしたいと思います。

 

 

○かみこ(神國料萌衣ちゃん)

メレンゲのお菓子のように甘くて、サファイアのように艶やかで、雛菊のように可憐な、かわいいかわいいかみこ。彗星のようにあらわれたあなたの愛らしさはわたしたちをたちまち夢中にさせました。それはかみこがかわいいだけではなくて、とても努力家でみるみるうちに成長しているのが見えるからです。花音ちゃんの不在という大きな穴を、新人の女の子に背負わせるのはあまりに酷ではないかと思われましたが、武道館ではますます歌に安定感が出ていて、「これからが楽しみ」なんて言葉をとっくに超えていました。かみこのほっぺぷにぷにしたいシンドローム

 

○りかこ(佐々木莉佳子ちゃん)

最後の挨拶のとき、泣かないと決めたりかこは、顔をこれでもかっていうくらいくしゃくしゃにして、何度も何度もくしゃくしゃにして、おっきな目をたくさんぱちぱちして、キュートな唇をへの字にして、なんとか涙の墜落をこらえました。そのおかしくって切なくって愛おしいことといったら。いつもりかこの華やかで完成された存在感には心ときめいてばかりですが、そんな特別な女の子のこんないじらしいところを見て、好きにならずにいられるでしょうか。

 

○あいあい(相川茉穂ちゃん)

今回の公演で、なんだか雰囲気が違うな?というかかわいくなった!チャーミングになった!とおどろいたのがあいあい。もともときれいなお顔だちなのはもちろんだけれど、なんだろう、表情なのかなあ。なかでもバレエのシーンはハツラツとしていて素敵でしたし、糸島のお衣装がとっても似合っていて、あいあいの魅力が少しずつ外側へと発現しているように感じます。交差点の「不器用な人だね 不安もあるだろう」という歌詞で喉を詰まらせるあいあいの手を、めいめいが優しく握っていて、胸がぎゅうぎゅうしました。

 

○むろたん(室田瑞希ちゃん)

「田村さんのストイックな部分とか、パフォーマンスとか、わたしが受け継ぎたいです!」と言ってくれたむろたん。そうです、みんながそう信じています。むろたんにはそう宣言できるほどの力があるとみんなわかっています。でもね、むろたん、わかっているだろうけれど、そんなに気負わなくて大丈夫だよ。スマイレージの音色を今に繋ぎ続けているのがあやちょだとしたら、アンジュルムの音色を作っているのは間違いなくむろたんです。むろたんがむろたんらしくのびのびと、生き生きと表現できる未来に、わたしたちは期待します。

 

○りなぷー(勝田里奈ちゃん)

変わらず省エネ、クールでのんびりやなりなぷー。だからこそ、武道館で感情を露わにする姿に驚き、感動しました。静かに目を濡らすりなぷー、楽しそうに満面の笑顔のりなぷー、とっても素敵でした。でもさすが、天才的なMCのおもしろさには、彼女の聡明さをいつも感じます。ブログに綴られた「今だから言えるけど、私達が認めてもらえるにはちょっと時間がかかったよね。」という言葉の重さ。わたしはその歴史を共有することができなかったけれども、どうかアメリカの尊い関係性が永久に続きますように。

 

○タケちゃん(竹内朱莉ちゃん)

リリイベで本物のアイドルを初めて目の当たりにして、もっとも魅了されたのがタケちゃん。もちろんタケちゃんのスキルの高さは重々承知しているつもりでしたけど、生のタケちゃんを見て自分の世界の小ささを知りました。タケちゃんは最近めきめき女性らしくなって、並行的にどんどんかっこよくなっていますが、中盤のヘソ出し衣装で見えたぽよぽよお腹についニッコリ。タケちゃんとめいめいが、実はお互いライバルだと思っていたことを告白して、驚いていたのはメンバーだけでした。でもそれをあえて口にしてくれることが、とても熱くて、切なくて、嬉しかった。ふたりの誇り高いアイドル魂が、無言のうちに競い合って磨かれたパフォーマンスが、きっとアンジュルムをここまで押し上げてきたから。ハロプロにシンメ文化があったなら、彼女らは伝説の二人になったろうな。

 

○かななん(中西香菜ちゃん)

みんなとっくに気がついてることだろうけれど、かななんほんとうにきれいになった。ハロプロの子たちを見ていて、女の子って18歳から19歳くらいの間にぐっとお顔だちが完成されるのだなあと思っているのだけれど、かななんはまさにそう。そこに表現者としての自信も加わって、映るたびにはっとするほどドラマティックなのだ。グループの中のポジションも年長者らしく、涙を浮かべながらも最後まで凛として、でもかななんらしいほほえみの温かさでいらっしゃいました。めいめいが卒業して、かななんの低音はより重要度を増していくんじゃないかなあと思っています。

 

○あやちょ(和田彩花さん)

思考回路はショートしまくっていたリリイベ握手会直後、脳ミソに残っていたたったひとつの映像は、宇宙をはらんだようにきらめくあやちょの瞳でした。ほんとうは同じ美術史学徒として「あやちょはドミニク・アングルの作品のように完璧に美しいです!」などの気のきいた言葉をかけようと思っていたのに、その静かながらも溢れんばかりの情熱を宿した瞳に、たちまちすべて吸い込まれてしまったのです。あやちょの持つ芸術性と高い理想は、いまやアンジュルム全体の精神として、メンバーひとりひとりの体内を流れています。すっかり初期とはメンバーもグループ名も変わってしまったアンジュルムが、スマイレージの曲を歌い継いでいくことができるのも、きっとそのおかげです。個性的なメンバーたちを引き連れてそのままどこまでも、遠い遠い地平の果てまで、突き抜けていってほしい。それができるひとだと、信頼してやみません。

 

○めいめい(田村芽実ちゃん)

ツイッターのログを見てみると、わたしが初めてスマイレージを見たのは、2014年12月3日のこと。それは「嗚呼すすきの」のMVで、めいめいのことは、なんだかお顔も歌いかたもアクの強い子だなあ、という印象を持った記憶がある。直後17日にアンジュルムに改名。1月7日にはめいめいが一番気になるとのツイート。まもなく「大器晩成」MV公開。我ながらすごいタイミングで入っていったものだ。

めいめいのダンスと歌が大好きです。「ヤッタルチャン」「ええか!?」のめいめいの存在感に痺れて、そのパフォーマンスの鋭さでもっていつも何かと戦っているような気の強さに憧れました。アンジュルムになってからは、新たに目指していく方向性のなかでますます存在感を増し、類を見ないタイプのアイドルとして花開いていました。だからこそ、卒業の発表を聞いたときには衝撃だったし、いろんな理屈を抜きにしても、なにより寂しかった。もっともっとアイドルとしてのめいめいの快進撃を見ていたかったから。新曲が出るたびに、めいめい今回はどんな新しい表現を見せてくれるのだろうとわくわくしていた、その期待をめいめいはいつも飛び越えてくれた、そんなすばらしい体験ももう二度とできなくなってしまうなんて。

だから慌ててリリイベを見に行って、初めてでぼっち参戦なのに無茶しやがって一日ぶっ通しで見たんですけれど、アンジュルムというグループの未来には輝かしいものしか見えませんでしたし、そんななかで迎えた卒コンは、やっぱりわたしのちっぽけな期待なんて掻き消してしまうくらいに、すばらしく魅力的なものでした。「ああ、めいめいの選択はこれ以上ないくらいに正しいのだ」と、不覚にも納得してしまったのです。

わたしが初めて見たハロプロ卒業コンサート道重さゆみさんのそれで、道重さんがあのとても美しいばらのドレスをお召しになっているのを見て、「女の子のアイドルが卒業するときのお衣装は、世界でいちばんきれいなお姫さまになるためのものなのだ」と思いました。花音ちゃんの卒業ドレスを見たときも、おなじことを思いました。けれど、めいめいのあのすばらしくすてきな水玉のドレスは、めいめいがお姫さまになるためのものではありませんでした。めいめいはいつだって、わたしたちの想像の向こう側に、そのすべての魂をかけて走ってゆくひと。めいめいのドレスは、めいめいが世界でいちばんのミュージカル女優さんになるための、めいめいが未来へ向かって飛び立ってゆくための、めいめいの大いなる夢のためのお衣装だったのでした。

 

もう止めたりできないよ、めいめい、いってらっしゃい。

 

*1:ちなみに、あやちょが美術史に興味を持つきっかけになった画家はエドゥアール・マネだと言っていましたが、わたしもまさに同じで、勝手にしたり顔をしているのです。

ジャニーズアイドルに歌ってほしいあの高樹詞この高樹節~堀込高樹作詞トニセン曲「不惑」発表に寄せて~

 

とんでもないニュースが飛び込んできた。

V6新作、トニセン曲はKIRINJI堀込高樹が作詞の「不惑」 - 音楽ナタリー

 

あの高樹が、男性アイドルの、ジャニーズの、V6の、トニセンの作詞をやるだって???!!!?!?!?!?!?!!?

 

神はわたしをお見捨てにならなかった!

生きているうちにこのような恵みにあずかることができようとは。

なんたる幸福!なんたる奇跡!

わたしはスマホを強く握りしめながら、事務所だとか、レーベルだとか、とにかくわたしの知りえぬ大いなる力に感謝した。

 

まるで熱心なファンでもないくせにこんなことを言うとお叱りを受けるであろうが、わたしは堀込高樹の作る音楽と詞を信仰している。

いやそもそも堀込高樹とは何者か。

堀込高樹は1996年から2013年春まで弟・堀込泰行キリンジとして活動した。現在はKIRINJIと改め6人組バンドを結成している。

www.youtube.com

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以上はキリンジ時代(兄弟時代)の楽曲である。兄弟ともに作詞・作曲・歌唱を手がけていたが、なかでも兄の曲を弟が歌うスタイルには定評があった。

多様な音楽性を見せる高樹の作風をおそれおおくもひとことで表すとするならば、「偏屈」である。

ぞくぞくするほどトリッキーな音運び、それでいてこのうえなく甘美なメロディーライン。

そこに小気味よく乗せられる、ひねくれた文学性に満ち満ちた歌詞。

わたしはとりわけ大学時代、キリンジの曲を聴きまくった。とにかく四六時中キリンジばかり聴いていた。

英雄的でなく、幻想的でない偏屈的な恍惚は、当時のわたしの求める最上の快感であった。

 

しかしまもなく弟・ヤスの脱退が発表され、埋められぬ寂しさを抱えつつネットを徘徊していたわたしは、気になっていたNONA REEVESの名前からこのインタビューにたどり着くことになる。

V6「kEEP oN.」西寺郷太&corin.インタビュー (1/4) - 音楽ナタリー Power Push

Sexy.Honey.Bunny!」「kEEP oN.」を手がけた「にしこりコンビ」。V6再ブレイクの立役者として、この二人の名前を知らないファンはいないだろう。

この記事そのものがアイドル音楽への愛に満ちた名インタビューであるが、わたしが驚いたのは冒頭で西寺さんが語っているこの箇所である。

そもそもイノッチってキリンジとかTRICERATOPSとかノーナとか、ま、あえて言うけど“通”が聴くような音楽にものすごく詳しくて。

ほう、と興味を持ったわたしはセクバニを聴いてその名曲っぷりに度肝を抜かれ、キーポンの奇曲っぷりに混乱し、イノッチ=井ノ原快彦=あさイチのアナウンサーだと思っていた人、ということに気づいてさらに動揺した。

そのうえ追い打ちをかけたのは、西寺さんのラジオ「TAMAGO RADIO」にイノッチがゲスト出演した際、披露された弾き語りである。

なんという上質な歌声!なんという繊細な技巧!

このように品の良い歌唱をするジャニーズがこの世に存在したとは。しかも、あの「あさイチの素朴な顔の人」が!*1

どうにもジャニーズの歌唱に苦手意識の強かったわたしが、ものの見事に心臓をブチ抜かれてしまった瞬間であった。

このことがきっかけでわたしは不用意にもジャニーズの岸辺にうっかり近寄ってしまい、果てにはメジャーアイドルという大海にぽうんと投げ出されてしまうことになったのである。

 

ところで、これまでに高樹とジャニーズに全く接点がなかったわけではない。

高樹は過去に二曲、SMAPに作曲提供しており、『BIRDMAN』に収録の「idea」、そして『S map』に収録の「愛の灯 〜君とメリークリスマス〜」がそれである。

両曲ともにファンが聴けば「めっ、めっ高樹~~~!!!」と叫びたくなることうけあいの複雑怪奇なメロディーラインが特徴である。

そのせいか(特に後者は)やたら木村さんのソロパートが目立ち、また吾郎ちゃんのダンスはたいへん窮屈そうな仕上がりとなっている。*2

残念ながら作詞は手がけていないであろうが無理もない、絶頂期のSMAPが歌うには高樹詞は不穏すぎる。

この二曲で高樹はメジャーアイドルへの楽曲提供に限界を感じたのであろうか、その後ジャニーズとの縁は途絶えてしまった。

またどこかしらのインタビュー記事で、インタビュアーが楽曲提供について水を向けたものの、アイドル楽曲との相性の悪さを口にしていたこともあった。

 

まあそんなわけで、盲目的な高樹信者であり、V6とイノッチをジャニーズ音楽の入り口としたわたしが(あるいはジャニーズとキリンジの兼オタの皆さんが)、今回のことに乱舞しないわけがない。

半ば諦めの気持ちでいたことが、ついに実現した!しかも今回は作詞提供、高樹の男性アイドル観を見ることのできる初めての機会なのである。

2016年5月9日現在、わたしたちが知りうるのは「不惑」という曲タイトルのみであるが、もう、これだけで高樹ファンは垂涎ものである。

不惑」!ジャニーズアイドルの楽曲で「不惑」って!!もう最高!!既に最高!!高樹最高!!という狂いっぷり。

その溢れんばかりの「高樹感」を受けとめ、自分のものとして昇華しきれるジャニーズアイドルなんて、イノッチを擁するトニセンのほかにはないのである。

 

と、「不惑」への期待をはちきれんばかりに抱え込んでいる現在なのであるが、ここまではあくまで長ったらしい前置きにすぎない。

この記事でやりたいのは要するに、大好きなジャニーズに歌ってほしい大好きな高樹詞はこれだ!!!という安易な妄想大会である。

これはジャニーズにはまった当初からわたしの脳内を占有していたが、思ったより早くこのような絶好の機会が訪れてしまったため、ここいらで一丁チキチキ暴露大会を催してしまおうという趣向だ。

そのなかで高樹詞の世界観を端的に言い表してしまうことには抵抗があるのだけれども、そんなみみっちいことをほざいていては紹介のしようがないので、どうか主観的な解釈として受け流していただきたい。

誰が楽しいかって、ほかでもなく、わたしが楽しい。

 

 

SMAP 「涙のマネーロンダリング

珍しくわりとストレートなロック調、だが内容は、若い女(おそらく水商売)に貢ぐ男の純愛の歌。

「欲しいものをあげる 飽きるまで何度も それを『愛ではない』なんて言わせない」とSMAPおじさんたちに歌わせたら、なんという説得力!

「フェイクファーに埋もれた柔らかな頬 守りたいだけさ」という印象的なパートは木村さんにゴージャスに歌唱してほしい。

稲垣吾郎「メスとコスメ」

その昔フィッシュマンズの佐藤さんにソロ曲を作ってもらうこじらせっぷりを発揮していた吾郎ちゃん、きっと高樹曲も歌いこなしてくれるに違いない。

簡単に言ってしまえば再会した元恋人が整形していたみたいな歌なんですけども。

「きっとなればいい 君はなればいい 君のなりたい”本当”になればいい」みたいな、女の欲求に同情するような視線を投げかけるところ、吾郎ちゃんに演じてほしい。

 

TOKIO「繁華街」

(※高樹ではなくヤスの作詞作曲であるとのご指摘がありました。浅はかな知識であるばっかりに、ご不快に思われたかたがた本当に申し訳ございません!恥を知りやがれ!)

古風でムーディーなサウンドに、しっくりと静かなメロディーライン、「珠玉の街」で始まるサビが美しい曲。

正直に言います、昭和の男・城島リーダーのイメージです。

「俺は傘を欠いたまま 在るだけの噂を買い占め 夜更けへ挑む」なんていうハードボイルド、リーダーにぴったりとしか言いようがない。

 松岡昌宏「ONNA DARAKE!」

六人体制のKIRINJIになってからの楽曲。

ドラマーの楠さんが歌唱しているからというのもあるけれども、みんなマボに「OTOKODOMOは何してるのか」って怒られたいでしょう?

リーダーやぐっさんの「チッチカー」も聴きたい。

 

▼V6「都市鉱山

奇曲まみれのキリンジのなかでもとりわけ珍奇な一曲。

タイトル通り都市鉱山がテーマ。

ライブではテンション爆上げ曲。ダンス映えもしそうだし、この前衛的なサウンドを表現できるのはキーポンを我が物としたV6兄さんしか考えられない。

高樹史上最高にキレた歌詞「いらなくなったPCおくれよ はずかしい画像は消したか?」はぜひ三宅さんに歌ってほしいなあ。

最後の元素記号連呼するところも、アイドル現場でやったらめちゃくちゃ楽しいだろうなあ。ホルミウムタンタル!ランタン イッテルビウム

▼井ノ原快彦「ハピネス」

本事件の中心人物ことイノッチには、既婚者が女という生き物をしずかに哀れむこの歌詞を。

ゆったりとして洒落たサウンドも彼の声質にぴったりかと。妄想でなくわりと本気で実現してほしい。

「知るかよ!」「笑わせるなっつうの!」の名フレーズをしっとりと歌い上げてほしいし、「ハピネスはピンクのシャンパンの泡のようなものだと君は信じてるの?」なんて見下してほしい。

 

Kinki Kids「いつも可愛い」

シティ・ポップの寵児ことキンキ先輩がキリンジを歌って楽しくないわけがない。

とはいえ声質の問題でなかなか選曲が難しいが、このゲンズブールふうのねっとりとした曲調はしっくりくるのではないだろうか。

ふわふわと甘いメロディーラインにあだめいた歌詞、サビの美しいハモリなどもおあつらえ向きである。

「甘い夢だけ見ていたいね 二人のときは」と意味深に歌唱してほしい。

 

▼嵐「千年紀末に降る雪は」

これは以前からかなり推してる組み合わせ。

若者代表・嵐さんもそろそろ男の寂寥感を表現する段階にきていると思う。

サンタクロース=与える人の孤独にそっと寄り添うような、高樹の詞のなかでも文学性の強いクリスマス・ソング

「恋人はサンタクロース 意外と背は低い」「『ごらん、神々を祭りあげた歌も、貶める言葉も今は尽きた。』」「君が待つのは世界の良い子の手紙 君の暖炉の火を守る人はいない」なんて、今やアイドル界において不動の人気を誇る嵐さんと重ね合わせることで、またこの詞の奥行きが増すように思う。

 

タッキー&翼「エトワール」

代表的な曲調がキリンジとかけ離れているために選曲が難しいがこの曲で。

初期のプロデューサーである冨田恵一さんのアルバムに収録されている。

映画のイメージソングということもあってストリングスのドラマティックな展開が印象的、タイトル通りバレリーナを主題としている。

「愛を囁きあうパ・ド・ドゥ踊れ」「影さえも裁ち切るピルエット回れ」なんて歌詞はどこかトンチキさもあって、滝翼の得意分野ではないだろうか。

 

▼NEWS「ブラインドタッチの織姫」

実際のファン層はもうすこし若いのかもしれないが、NEWSさん自身(特にコヤシゲ)に何故だかイマドキOL感が漂っているので、この選曲。

「善男善女が競う恋の技 君は腕だめしに気遅れて…」と寄り添っておきながら、サビで軽率にチューしようとするどうしようもないチャラさとか、NEWSさんの十八番・ワンナイトラブを感じる。

いっぽうで「この星は青くて丸い屑籠」なんてマクロ目線が入るトンチキさはアイドルソングみがあって楽しい。

シゲアキ先生もキリンジ好きを公言しているんですよね。好きな曲とか知りたい。

 

関ジャニ∞「奴のシャツ」

高樹自身、若干やりすぎたと反省している程度にやりすぎた歌詞。

「ボタンを掛け違えたまま大人に」なってふらふらと生きているどうしようもない男の歌なのだが、やさぐれ男を歌わせてエイト兄さんの右に出るものはいないであろう。

やさぐれた大倉さんあたりに「姪が歯医者に行くので付き合」ってほしいし、やさぐれた丸山さんあたりに「そうさ遺産があればしばらくしのげる」と呟いてほしいし、やさぐれたすばるさんあたりに「親父の通夜で絡まれ」てほしい(?)。

 

KAT-TUN「悪玉」

一貫してスタイリッシュでかっこいいヒールを演じてきたKAT-TUN、そろそろダサくてかっこわるいヒールも歌ってもらえるんじゃないだろうか。

「ギリギリでいつも生きていたい」とデビューした彼らが「捨て身の奴に負けはしない 守るべきものが俺にはあるんだ」と歌ったらばものすごいカタルシス。

それにさ、上田さんはボクシングやってるからな(それが言いたかっただけ)。中丸さんの歌声は高樹詞と最も相性が良いと思う。

「マイク寄越せ早く!」とわちゃわちゃしあうのも想像できていいね、アイドルっぽい。

田口淳之介「イカロスの末裔」

デリカシーがなくてたいへん申し訳ないのだがこれだけは削れなかった。

脱退を発表する前からずと考えていたんですけれど、キリンジにしては陽気で軽やかな曲調にかわいらしくも皮肉のきいた歌詞が乗っかったこの曲。

あのどうしようもなくふわふわとした微笑みを浮かべながら「キスを見舞うぜベイビー」「パンツは脱いじゃダメ」「林檎が腐ってなければいいね」なんていちいち語尾に♪マークをつけてイラッとするような感じで歌ってほしい。

今となって改めて歌詞を見ると図らずも「これで浮世と暫しのお別れさ」「遠くまで行けるかな 堕ちるすべなら皆心得てる」なんかが刺さる。

 

▼Hey!Say!JUMP「今日も誰かの誕生日」

ライムスターの宇多丸師匠がSMAPに歌ってほしいと言っていたこの曲であるが、この真っ当さとキラキラ感はJUMPに最も相応しいのではないだろうかと思う。

なんならパート割とかも考えてる気色の悪いレベル。

かわいいかわいいJUMPちゃんたちがお誕生日パーティーを開くMVでよろしく。

あえていうなら「世界は憂鬱 いつでも残酷」は知念さんに、「だけど今夜は最高」は有岡さんに、「あなたが優しく蝋燭を吹き消せば」は薮様に歌ってほしいかな。

▼中島裕翔「わたしの青い空」

裕翔りんを好きになったきっかけって実をいうと、藤井隆さんに声質が似ているなあと思ったところからなわけで、まあわたしの都合の良い耳のせいであって実際はそんなに似てないのだけれども、とにかく藤井ちゃんの曲はまるっとすべて裕翔りんに歌ってほしい。

高樹が藤井ちゃんに提供してる曲は4曲(うち1曲は作曲のみ)あって、迷うけれどやっぱりこれかな。

この素晴らしい曲と素晴らしいMVを、無表情で低体温に再現してほしい。それはそれは奇妙で愉快でお美しいのだろうなあ。

裕翔りんに「卒業 誕生日 迎えるたび君の値打ち下がるなんて 馬鹿だな」なんて歌われるその想像だけで軽く昇天できる。

いやでも藤井ちゃん曲だったら「未確認飛行体」もアイドル裕翔りんにぴったりの曲だしなんなら高樹全然関係ないけど「OH MY JULIET!」はわりと本気でカヴァーしてほしい。

▼伊野尾慧「かどわかされて」

これも以前からツイッターでわりとうるさく言っているんですが、サビの「かどわかされた他愛のない審美眼 甘い誘惑 溜息まじり あばずれの毒(プワゾン)」だけでもうめちゃくちゃ伊野尾さん。

伊野尾慧の魅力にかどわかされる人が後を絶たない現在、この曲をなんでもないように、鼻歌みたいにさりげなく歌ってほしい。

 

Kis-my-Ft2「Golden harvest」

高樹自身が自画自賛するできばえのこの曲、とにかくコード進行とメロディーラインが難解すぎるが、歌詞は比較的ポジティブで爽やか、かつ詩的で美しい。

「明日になったらきっと誰もが君の正しさに頷くだろう」「実りの季節にきっと誰もが讃えるだろう君のsuccess」なんてちょっと強い歌詞も、キスマイにはそのくらいのストレートさが合う。

 

Sexy Zone「君の胸に抱かれたい」

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(※心臓の弱いかたはいろんな意味でお気をつけて視聴ください。)

高樹にしては珍しいハッピーソングかと思いきやそう一筋縄にもいかないんですけれども、「君をこの腕でつつみたいんだ」と歌った直後「君のその胸に抱かれたい」とくるその矛盾はSexy Zoneっぽいなあと。

「君は泣くふりも素敵だ 姿のいいひとよ」なんてマリウスちゃんに歌われたらどんな感情になったらよいのかわからない。

中島健人「十四時過ぎのカゲロウ」

水泳部員をテーマにした爽やかな一曲だが、「水辺の生き物だから陸では生きてゆけない気がしている」でふと浮かんだのがおケンティーさんであった。

おケンティーさんのアイドル道というのはどこかスポーツ選手のようなストイックさすら感じさせるところがあるのが恐ろしい。

「欲しいものは見えている」なんていう意志の強さも。

 

A.B.C-Z「自棄っぱちオプティミスト

A.B.C-Zの明るくポップでアイドルらしい持ち歌がとても好きなんですけれども、この曲くらいの脱力感あるポジティブさも楽しそう。

えびさんたちが住宅街とかのなんでもない通りをふらふら歩きながら「この町の景色をもっと君が愛したのなら世界は変わる」なんてのんびり歌うMVが浮かんでくる。

「流れ星を見逃しても」「昨日の涙はstar dust」なんていう星モチーフが多いのもぴったり。

 

ジャニーズWEST「クレゾールの魔法」

病院で出会った風邪ひきの女性(という妄想)にフェチを感じている、高樹お得意の変態歌詞。

洒落たピアノ伴奏がかえって腹立たしいのだが、ラジオ等でなんともいえない誰得な妄想をたびたび披露しているWESTさんにニヤニヤしながら歌ってほしい。

「同じ薬で同じ症状だと知って 洟すすりあうも多生の縁」なんてまじで意味わかんないけどWESTさんが歌ったら絶対楽しい。

最後の「風邪引きの女性は美し すぎる!」のところはライブでみんな揃って叫びたいよね。

中間淳太「ロマンティック街道」

以前WESTに歌ってほしい曲アンケートみたいなのをやっていて、これを投票して浮きまくっていたのはわたしです。

周りが続々結婚してる、はやく結婚したい、なんて年中ぼやいている系アイドルお淳太さまにこの曲を、とはいえ結婚までに実らなかった恋の歌なんだけれども。

「孔雀のように誇らしく生きてゆきたい」に夢抱きの衣装を連想したなんてそんなことはない。たぶん。

 

▼すべてのシンメに「耳をうずめて」

高樹詞のなかでも難解を極めるこの曲、キリンジすなわち堀込兄弟のことを歌っているとする解釈が一般的。

ひとりがふたりになる、その出会いを極めて静かに、低い体温で歌ったものであるが、普遍的なシンメソングですらある。

「僕ら音楽に愛されてる、そう思うのか?」なんていうドキッとするような問いかけを、すべてのシンメたちは、そしてシンメを持たないアイドルたちは常にどこかへ投げかけ続けているのだろうなあ。

 

 

ああ、楽しかった~~~~~!!!!!!!!!

好きなものと好きなものを組み合わせるのってほんと楽しい!オタクやっててよかった!

こんなしょうもない記事ですが、ちょっとでも堀込高樹の音楽に興味を持ってくださった皆さん、ここで紹介しているのは名曲の数々のほんの一部分であるからして、ぜひいろいろと聴いてみていただきたい。

ともあれ「不惑」、とってもとっても楽しみにしています!

*1:各方面にお詫びします。

*2:わたしはダンスのあまりお上手でない吾郎ちゃんが大大大好きである。

拝啓、自担様(1)  想いは想いのままで

拝啓、堂珍嘉邦様。

 

はじめてお手紙を書かせていただきます。

不躾ですが、わたしはあなたの、そしてあなたと川畑要さんによるボーカルデュオ・CHEMISTRYのファンをしていました。

それも振り返れば、もう5年あまり前のことです。

それだのにどうして今更、あなたへの思いをこうしてしたためようとしているのか。

それは、あなたがわたしにとって「最初の自担」であることに、ふっと気がついてしまったからなのです。

 

わたしは一年半ほど前から、アイドルのファンになりました。

なかでも、ジャニーズ事務所のアイドルグループに入れ込むようになりました。

それはわたしの個人史において、たいへん革命的で、なおかつ受け容れがたい事件でありました。

わたしはその事件に至るまでの自分の心境の変化をどうにか紐解いて、わたしの自意識を説得しようと試みています。

そこでわたしの趣味趣向の変遷を順々に手繰り寄せてゆくと、辿り着くのはいつもあなた、堂珍嘉邦という結び目だということが、どうしても無視できないのです。

 

この5年間というもの、包み隠さず正直に言ってしまえば、わたしはあなたがたのファンであったことを忘れようとしていました。

いわゆる黒歴史として、記憶のかなたに葬ってしまおうとしていました。

なんと恩知らずなことでしょうか。

しかしこの年齢になって、アイドルのファンになった今だからこそ、あなたがたのファンであった過去の自分のことを見つめ直せるのではないかと思っているのです。

そう、このブログは自分のためだけに、自分の音楽や芸能への気持ちを整理するためだけに書き綴る気色のわるいポエムです。

数々の非礼を連ねること、どうかお許しください。

 

 

子どものころ、わたしは、趣味が無いことがコンプレックスでした。

まして好きな芸能人なんてずっといませんでした。

両親があまりバラエティー番組に好意的でなかったことも一因かと思いますが、わたし自身も、学校で友だちが話題にしているチャラチャラとした番組の類には、ちっとも興味がありませんでした。

一世を風靡していたモーニング娘。でさえも、知っているメンバーは後藤真希さんとミニモニ。くらいなものでした。

中学生になると吹奏楽部に入って楽器を始め、ようやく打ち込めることを見つけたのですが、そのくせ音楽そのものには相変わらず無関心のままでした。

同級生たちが演奏曲の候補として持ち寄ってくる流行りのポップスも、好き嫌いはなんとなしにあったものの、自分からCDを買ったりなんて、思いつきもしませんでした。

当時勢いのあったKAT-TUN、NEWSなどのジャニーズグループには(というより、彼らの長ったらしい襟足たちには)嫌悪感すら抱いていました。

 

はじめ、あなたがたのファンだったのは兄でした。

自分から音楽を聴くことがなかったわたしにとって、正反対の性格のミーハーな兄は最も身近な情報源だったのです。

兄はよく車の中でCDをかけたり、家の中で大声で熱唱したりしていたので、CHEMISTRYの音楽は自然と耳に入ってきていたのですが、別段好き嫌いを感じていたわけでもありません。

その受動的な摂取がいきなり、能動的な「好き」に変わったのは、ある曲がきっかけでした。

地図にない途を求め 迷い合ってもいいだろう

擦り減らした思い出は しまいこんで笑い合い

傷ついて 閉ざされても 誰かと出会えるのなら

歩いてく 振り返れば今も あの日の僕らが霞む

CHEMISTRYの3rdアルバム『One×One』の一曲目に収録されている「Us」です。

今となってはこの曲のどこがまったく不感症なわたしの琴線に触れたのか、どうにも思いだすことができませんが、今でもこのサビを聴くと胸が熱くなります。

 

それからわたしは、兄のコレクションの恩恵を受け、一気にCHEMISTRYの曲を聴き漁りました。

中学二年生の秋頃のことだったと記憶しています。

歌手というものに興味を持ったことがいちどもなかったため、当初まるで違うあなたがた二人の声を聴き分けるのにも苦労していました。

まず間違いなく二人の声を識別できるようになったころ、わたしはちょうど15歳年上のあなた、堂珍嘉邦さんに心底惚れぬいていました。

マットではかなげな、それでいてしなやかに艶めいた、ベルベットのように美しい最高級の歌声。

くっきりとした目鼻立ちに、気品ある甘やかさと大人の男性の渋みをのせた、そこいらのアイドルに勝るとも劣らないルックス。

そしてそんな煌びやかなアウラとは裏腹に、のんびりとマイペースで、抜けていて大雑把で、格好つけるのが下手な広島の兄ちゃん的気質。

すべてが魅力的でした。

自分の世界の小ささを自覚しつつ、あなたが世界一の歌手だと疑いませんでした。

あなたはわたしがはじめて惚れ込んだ歌手であり、芸能人であり、そして今考えてみると、はじめて好きになった「アイドル」でした。

そう、あなたはわたしにとって「最初の自担」であったのです。

 

ここでは「アイドル」や「自担」の定義について深くは言及しませんが*1、ただジャニーズやハロプロのアイドルを応援しているときの気持ちと、あなたを応援していたときの気持ちに、少なからず似ているところがあるということは無視できません。

自分の冷静な部分では、もっと高いスキルを持った芸能人は世界に数多いるとわかっているのに、それでもあなたを世界一だと思い込んでやまない、ある種の信仰心にも似た気持ち。

むしろ、他の芸能人に目移りしてはならないという盲目さ、独りよがりな「担当としての責任感」のようなものは、若さゆえの純粋さのためか今よりも強く抱いていたように思います。

またあるいは、わたしにとっての自担が疑似恋愛の対象にならないという価値観も、このころからのものでした。

そのころ既にあなたは結婚なさっていて、お子さんもいらっしゃいましたし、それもあなたの魅力のひとつでしたから。

しかし当時のわたしは、あなたを好きになったがゆえに、アイドルに対する視線がいっそう厳しくなってしまっていたたことは事実でした。

「最初の自担」ことあなたが、あれほど美しくてあれほど歌がうまい人だったのですから、アイドルを好きになれるまでに時間がかかったのはしかたのないことだなあ、と我ながら思うのです。

ええもちろん、今はアイドルの魅力を十二分に思い知ったうえで申し上げているのですが、「ジャニーズなんて堂珍さんよりも歌が下手でブサイクで下品な曲ばかり歌っているのに、どうして!」と若さゆえの対抗心を燃やしていました。

 

閑話休題、わたしはあなたがたのファンであったあいだに四回、ライブにうかがいました。

そのなかでもとりわけ思い出深いのは、2010年に行われた『regeneration』ツアーです。

なんといっても、踊るCHEMISTRY、踊る堂珍嘉邦の登場は、まさに革命的なできごとでありました。*2

あなたがその容姿の美しさを活かし、川畑さんがその身体能力の高さを活かしたダンスパフォーマンス。

先ほどあなたがたのことをアイドルと並べて表現しましたが、ダンスをすること、すなわちよりアイドル的な方向性にシフトすることには、少なからず葛藤があったものと推察いたします。

現在ほどインターネットに染まっていなかったわたしの情報収集能力でも、ファンからの賛否両論があったことは確かでした。

しかし、わたしは持ちうるすべての武器を備えて苦しい時代を戦う30代のあなたがたが、なによりも魅力的に見えました。

 All My Love すべて君に捧げよう

Yes! Baby Baby その微笑みが答えさ

ソロ曲『ALL MY LOVE』で、あなたは甘く優しくやわらかな声質を封印し、強く高らかに吼えました。

伸ばしていた髭を剃り、華やかな衣装を着て、しなやかに舞うあなたの美貌に、わたしは歓喜しました。

「その微笑みが答えさ」と!

 

しかしわたしがあなたがたの活動から離れてしまったのは、10周年ライブに参加してまもなくのことでした。

あまりに強く匂わせていたので、活動休止の発表があってもちっとも驚きませんでした。

わたしは大学のために一人暮らしを始め、音楽の世界を少し広げたことで、あなたがたに固執する気持ちは驚くほどはかなく消えてしまいました。 

それからわたしはあなたがたを好きだったという事実を忘れようと努めました、いいえ、ほとんど忘れていたといってもいいくらいでした。

しかし最近になって、アイドルを応援しはじめてからというもの、無意識にあなたを基準にしている自分に気がつくことがあるのです。

あるアイドルの歌を聴いて、あなたの歌声と似ていたことから好きになり、たびたび脳内でCHEMISTRYの曲を歌っているところを妄想してみたり。*3

あるアイドルの写真を見て、あなたの写真と似た構図であることにドキリとし、並べてみるとそもそも顔立ちがよく似ていることに気がつき、自分の好みの揺るぎなさにため息をついたり。*4

お恥ずかしいかぎりですが、わたしはアイドルファンになった今でも、ずっとあなたの幻影を追い続けているのかもしれません。

 

昨年の5月、わたしはあなたが水曜歌謡祭の特番で、NEWSの増田さんといっしょに歌っているところを拝見しました。

あなたに夢中だったあの頃には到底思いつかなかったような心境で、わたしはそれを鑑賞しました。

あなたは変わらず、むしろいっそう美しく、格好良くなっているように映りました。*5

それを穏やかに認めることができるようになって本当によかったとつくづく思います。

あなたを好きになってよかった。アイドルを好きになってよかった。

あなたは永遠に、わたしの「最初の自担」です。

 

でもね、やっぱりわたしは、あなたがたお二人の化学反応を、もういちどだけでいいから見てみたいのです。

 

 

かしこ

「指先に触れては感じる懐かしい痛みが」まだ残っているあなたのファンより

 

*1:アイドルグループとしてのCHEMISTRYというテーマについては改めて書いてみたいと考えてはいるところです。

*2:regeneration=革新、改造、再建、など。

*3:中間淳太さんのこと。

*4:中島裕翔さんのこと。

*5:金髪がたいそうお似合いでしたが、いまは黒髪のようです。