魂ひとつで/田村芽実ちゃん卒業公演ライブビューイングレポート

 

1年半前から突然アイドルにはまり普段はジャニーズ中心でハロプロデビュー組に名前のわからない子がいて生で見たことあるのはリリイベ一度だけの超絶にわか茶の間ファン(20代喪女)がはじめてのハロプロライブビューイングにぼっち参戦してきたよの巻。

ちなみに初めて行ったリリイベはこないだの「次々続々/糸島Distance/恋ならとっくに始まってる」だし、ジャニーズ中心と言いながらジャニーズのコンサートには行ったことがない、正真正銘純粋培養の在宅ファンです。

 

わたしをアイドルの世界に導いてくれたBerryz工房が活動休止してからというもの、その心の穴を愛らしい笑顔とキレまくったパフォーマンスで満たしてくれた田村芽実ちゃんの卒業コンサートということで、なんとか時間休をもぎとりライブビューイング会場に駆けつけました。

ものすごいどうでもいい話なんですけど会場の映画館がすごいシャレオツなビルディングに入っていて、待ち時間中所在なげに右往左往するオタクたちが愛おしく。まあそんな中でもどうやら座れるカフェがあったのでそこで開演15分前くらいまで時間をつぶして入場したんですけれども、聴こえてくる「ネンネンネンネネンネンネン……」というゆかいなフレーズ。オープニングアクトのことすっかり忘れてたっていうか初めてだからしらねーよ!

ちなみに座席なんですけども遅れて取ったせいで前から4列目の通路側でかなり見上げる状態。観客は7割くらいペンライト持ってきてて、3〜4割くらい女性だったかな。ライブビューイングすっごい良くて自分に向いてるなと思いました。基本地蔵スタイルだし、コールもあまりわからないし、なにしろ目が悪くて現場だとちっとも見えないし、ひとりの動きをずっと見ていたいというよりは箱推しだし。かといってDVDとは違ってリアルタイムだし、大画面と音響でドキュメンタリー映画を見ているような気分になりました。会場のおたくたちはペンライト振りは完璧にやってたんですけどコールとかはほとんど聞こえませんでした。わかる曲ではささやかながらコールもしてみたいという面倒なタイプの地蔵なのでその点ではすこし寂しかったかな。

 

そんな前置きはさておき、厳かにはじまるオープニング映像。とにかくこの映像のセンスが良い。あまりいろいろなアイドルを見てきたわけではありませんが、こんなにクオリティーの高い、それでいてメンバー紹介としても申し分のないオープニング映像ははじめて見ました。水面に絵具を垂らし、メンバーが思い思いのマーブル模様を描いていくようすが幻想的に映し出されます。最後にめいめいがそのマーブル模様を紙にうつしとり、その紙からぽたぽたと水滴が垂れた先には、ANGERMEの文字が浮かび上がります。そして強い逆行のなかメンバーが悠々とステージに現れ、レーザーと電子音によるスタイリッシュな演出とともにリフトアップ、そして最新曲「次々続々」、壮大なロックサウンドの「ドンデンガエシ」。この一連の流れのなんと芸術的なことか!一部の隙なく練り上げられた構成に、息をのむほど圧倒されます。それなのに、全員、ひとりのこらず、その世界観に負けていないのです。誰が映っても余すところなくかっこよくて、かわいらしくて、憂いも悲しみも飛び越えた、言いようのない感動に襲われます。ハロプロのコンサート映像を見るといつも思うのですが、愛らしい女の子たちが笑顔で(活き活きとした表情で)歌い踊っているさまを見るだけで、どうしてこんなに胸が締めつけられるほどの切なさと喜びが湧きあがってくるのでしょう。

糸島Distance」ではお衣装がぱっかり割れてまたすてきなお衣装。もっぱらの評判ですがほんとうにアンジュルムのお衣装はすてきです。担当スタッフさんの技術、事務所内での注目度はもちろんあるでしょうが、なによりオープニング映像も含め、リーダーあやちょの卓越した審美眼が大きく貢献しているに違いありません。その後3曲はベストアルバム特典曲。わたしは初回B盤を購入していたので、「汗かいてカルナバル」「マリオネット37℃」の良曲っぷりは存じておりましたが、なんといってもこのライブでの初見で衝撃的だったのが「カクゴして!」というとびっきりのキラーチューン!スマイレージ的なハイパーキュートポップチューンの流れをくみながら、アンジュルムらしい挑発的な女の子像も併せ持っている最高さ!ぜひライブの定番曲になってほしいです。

続けてスマイレージ曲のターン。なにより盛り上がったのは「プリーズ ミニスカ ポストウーマン!」。バックにはMVも流れて、幼いめいめいにきゅんきゅんしながら、なんてすてきな女性になったんだろうと感激しきり。というかオタクの皆さんにはほんとうに今更な話なんですけど、スマイレージ初期曲はライブがとりわけ楽しい!「夢見る15歳」「有頂天LOVE」なんかは映画館の音圧が良く効いて、ライブビューイングに来てほんとうに良かったなと思いました。

そしてめいめいと3、4期のプリティーで笑顔いっぱいのコーナー。アンジュルムがすごくお得なグループだなと思うのは、改名以降は力強くてカッコイイ路線に統一されているんですけれど、こうしてスマイレージのカワイイ名曲たちも引き継いでいるところ。3、4期メンバーが王道アイドルらしく歌って踊る姿も見ることができてすごく嬉しいのです。ぎゅっとくっついて楽しそうにはしゃぎながら歌う5人を見てもう既に決壊寸前。のところで初期2期の「スマイルファンジー」がきて、その神々しさ、尊さに逆に涙が引っ込みました。荘厳で雄大なスケールの世界観は、まさに田村芽実というアイドルにしか成しえないすばらしいステージでした。そして花音ちゃんの卒コンでも感動を呼んだ「交差点」。ここできてしまうの早くない?!と動揺しつつ、花音ちゃんのときにも思いましたけれど、実にアンジュルムメンバーの卒業にふさわしい詞。メンバーが涙するなか、とびっきりの笑顔でいるめいめいを見て、ついに涙腺崩壊。朦朧としながらエモに浸っていると、めいめいの決然とした台詞からの「恋ならとっくに始まってる」、痺れました。つんくさんはほんとうに最高の曲をプレゼントしてくれましたね。"私もどうなってもいいみたい"なんて好きなアイドルに歌われたら、そりゃあ、心がぐっちゃぐちゃになったって、笑顔で送りださなきゃなって思わずにいられない。

アメリカのMCは彼女たちらしく愉快で、きっとずーっと友達でいてくれるんだろうなって、ちっとも寂しさを感じさせてくれないところが大好き。続く「私、ちょいとかわいい裏番長」は在宅にとってあこがれの曲!3期の煽りも良かったけれど、最後にお着替えの終わっためいめいが躍り出てきてそのドスの効いた声で場をぐっとさらっていく爽快感といったら!花音ちゃん、めいめいがいなくなって、この曲はどう歌い継がれていくのか楽しみ。その後はアンジュルムのシングル曲の怒涛のメドレー。「大器晩成」はやっぱり会場みんなの心をひとつにしてくれる名曲で、この曲があるかぎりアンジュルムは大丈夫だな、と確信できます。そして多幸感のシャワーの降り注ぐ「スキちゃん」。このあたりはもういろんな感情が駆け巡って意識が朦朧としていましたが、めいめいとあやちょのとびっきりの笑顔がぼんやりと記憶に残っています。メンバーが退場してからは、一面の紫ペンライトの海でめいめいコール。切実にめいめいを呼び続けるオタクたちに、わたしも思わず声を張り上げました。

次に現れためいめいは、濃いオレンジ色に白い水玉のレトロなドレスに、白いリボンのついた麦わらの帽子。とってもかわいくて素敵でした。今まで見かけたことのある卒業ドレスのなかでもひときわセンスが良くて、めいめいらしさがぎゅっと詰まったお衣装でした。そのお衣装で「自転車チリリン」を歌う、いや、演じてみせるめいめい。お手紙もとっても明るくて、のびやかで、たくましくて、かわいらしくて。明日からのことなんて誰もわからないのに、不安であたりまえなのに、「約束させてください」と堂々宣言するめいめいは、ほんとうに意志の強い女の子、わたしの大好きな戦う女の子そのものでした。めいめいは自分のことをなにもできない小さな存在だというけれど、そんないたいけな肉体に魂ひとつ宿して戦える女の子は、世界じゅう探したってそんなにたくさんはいないんだよ。

最後のあいさつで、メンバーがみんな次々に涙してしまって、めいめいがどれだけ愛されたひとだったかというのを実感しました。すばらしい美脚の映えるパンツスタイルに着替えためいめいは、「旅立ちの春がきた」「友よ」でもいつも通り研ぎ澄まされ冴えわたっていて、ちっともしんみりすることなく、軽やかにさわやかに巣立っていきました。わたしにとってBerryz工房のラストコンサートはひとつの聖典でしたが、思いっきり別れを惜しんで泣かせてくれるラストもあれば、こうして笑顔のままに終えてくれるラストもあるのだなあ。最後にひとり出てきてくれたときにまで誠実にまっすぐに届けてくれためいめいの言葉は、喪失感以上にわたしたちを勇気づけてくれました。類稀なる鮮烈な才能と、ほとばしるばかりの情熱を持った、ひとりの偉大なアイドルの軌跡の片鱗を、そして彼女を擁したグループのひとつの巨大な完成形を、こうして感じることができて心の底から幸福でした。

 

終演後は目を血走らせながらも楽しさの余韻に口角が上がってしまう不気味な顔面をサラリーマンたちに曝しながらの帰宅でした。語彙が貧相なレポートでお恥ずかしながら、メンバーひとりひとりがほんとうに魅力的で書きたいことがいっぱいあるので、最後にざっと連ねて終わりにしたいと思います。

 

 

○かみこ(神國料萌衣ちゃん)

メレンゲのお菓子のように甘くて、サファイアのように艶やかで、雛菊のように可憐な、かわいいかわいいかみこ。彗星のようにあらわれたあなたの愛らしさはわたしたちをたちまち夢中にさせました。それはかみこがかわいいだけではなくて、とても努力家でみるみるうちに成長しているのが見えるからです。花音ちゃんの不在という大きな穴を、新人の女の子に背負わせるのはあまりに酷ではないかと思われましたが、武道館ではますます歌に安定感が出ていて、「これからが楽しみ」なんて言葉をとっくに超えていました。かみこのほっぺぷにぷにしたいシンドローム

 

○りかこ(佐々木莉佳子ちゃん)

最後の挨拶のとき、泣かないと決めたりかこは、顔をこれでもかっていうくらいくしゃくしゃにして、何度も何度もくしゃくしゃにして、おっきな目をたくさんぱちぱちして、キュートな唇をへの字にして、なんとか涙の墜落をこらえました。そのおかしくって切なくって愛おしいことといったら。いつもりかこの華やかで完成された存在感には心ときめいてばかりですが、そんな特別な女の子のこんないじらしいところを見て、好きにならずにいられるでしょうか。

 

○あいあい(相川茉穂ちゃん)

今回の公演で、なんだか雰囲気が違うな?というかかわいくなった!チャーミングになった!とおどろいたのがあいあい。もともときれいなお顔だちなのはもちろんだけれど、なんだろう、表情なのかなあ。なかでもバレエのシーンはハツラツとしていて素敵でしたし、糸島のお衣装がとっても似合っていて、あいあいの魅力が少しずつ外側へと発現しているように感じます。交差点の「不器用な人だね 不安もあるだろう」という歌詞で喉を詰まらせるあいあいの手を、めいめいが優しく握っていて、胸がぎゅうぎゅうしました。

 

○むろたん(室田瑞希ちゃん)

「田村さんのストイックな部分とか、パフォーマンスとか、わたしが受け継ぎたいです!」と言ってくれたむろたん。そうです、みんながそう信じています。むろたんにはそう宣言できるほどの力があるとみんなわかっています。でもね、むろたん、わかっているだろうけれど、そんなに気負わなくて大丈夫だよ。スマイレージの音色を今に繋ぎ続けているのがあやちょだとしたら、アンジュルムの音色を作っているのは間違いなくむろたんです。むろたんがむろたんらしくのびのびと、生き生きと表現できる未来に期待します。

 

○りなぷー(勝田里奈ちゃん)

変わらず省エネ、クールでのんびりやなりなぷー。だからこそ、武道館で感情を露わにする姿に驚き、感動しました。静かに目を濡らすりなぷー、楽しそうに満面の笑顔のりなぷー、とっても素敵でした。でもさすが、天才的なMCのおもしろさには、彼女の聡明さをいつも感じます。ブログに綴られた「今だから言えるけど、私達が認めてもらえるにはちょっと時間がかかったよね。」という言葉の重さ。わたしはその歴史を共有することができなかったけれども、どうかアメリカの尊い関係性が永久に続きますように。

 

○タケちゃん(竹内朱莉ちゃん)

リリイベで本物のアイドルを初めて目の当たりにして、もっとも魅了されたのがタケちゃん。もちろんタケちゃんのスキルの高さは重々承知しているつもりでしたけど、生のタケちゃんを見て自分の世界の小ささを知りました。タケちゃんは最近めきめき女性らしくなって、並行的にどんどんかっこよくなっていますが、中盤のヘソ出し衣装で見えたお腹についニッコリ。タケちゃんとめいめいが、実はお互いライバルだと思っていたことを告白して、驚いていたのはメンバーだけでした。でもそれをあえて口にしてくれることが、とても熱くて、切なくて、嬉しかった。ふたりの誇り高いアイドル魂が、無言のうちに競い合って磨かれたパフォーマンスが、きっとアンジュルムをここまで押し上げてきたから。ハロプロにシンメ文化があったなら、彼女らは伝説の二人になったろうな。

 

○かななん(中西香菜ちゃん)

みんなとっくに気がついてることだろうけれど、かななんほんとうにきれいになった。ハロプロの子たちを見ていて、女の子って18歳から19歳くらいの間にぐっとお顔だちが完成されるのだなあと思っているのだけれど、かななんはまさにそう。そこに表現者としての自信も加わって、映るたびにはっとするほどドラマティックなのだ。グループの中のポジションも年長者らしく、涙を浮かべながらも最後まで凛として、でもかななんらしいほほえみの温かさでいらっしゃいました。めいめいが卒業して、かななんの低音はより重要度を増していくんじゃないかなあと思っています。

 

○あやちょ(和田彩花さん)

思考回路はショートしまくっていたリリイベ握手会直後、脳ミソに残っていたたったひとつの映像は、宇宙をはらんだようにきらめくあやちょの瞳でした。ほんとうは同じ美術史学徒として「あやちょはドミニク・アングルの作品のように完璧に美しいです!」などの気のきいた言葉をかけようと思っていたのに、その静かながらも溢れんばかりの情熱を宿した瞳に、たちまちすべて吸い込まれてしまったのです。あやちょの持つ芸術性と高い理想は、いまやアンジュルム全体の精神として、メンバーひとりひとりの体内を流れています。すっかり初期とはメンバーもグループ名も変わってしまったアンジュルムが、スマイレージの曲を歌い継いでいくことができるのも、きっとそのおかげです。個性的なメンバーたちを引き連れてそのままどこまでも、遠い遠い地平の果てまで、突き抜けていってほしい。それができるひとだと、信頼してやみません。

 

○めいめい(田村芽実ちゃん)

ツイッターのログを見てみると、わたしが初めてスマイレージを見たのは、2014年12月3日のこと。それは「嗚呼すすきの」のMVで、めいめいのことは、なんだかお顔も歌いかたもアクの強い子だなあ、という印象を持った記憶がある。直後17日にアンジュルムに改名。1月7日にはめいめいが一番気になるとのツイート。まもなく「大器晩成」MV公開。我ながらすごいタイミングで入っていったものだ。

めいめいのダンスと歌が大好きです。「ヤッタルチャン」「ええか!?」のめいめいの存在感に痺れて、そのパフォーマンスの鋭さでもっていつも何かと戦っているような気の強さに憧れました。アンジュルムになってからは、新たに目指していく方向性のなかでますます存在感を増し、類を見ないタイプのアイドルとして花開いていました。だからこそ、卒業の発表を聞いたときには衝撃だったし、いろんな理屈を抜きにしても、なにより寂しかった。もっともっとアイドルとしてのめいめいの快進撃を見ていたかったから。新曲が出るたびに、めいめい今回はどんな新しい表現を見せてくれるのだろうとわくわくしていた、その期待をめいめいはいつも飛び越えてくれた、そんなすばらしい体験ももう二度とできなくなってしまうなんて。

だから慌ててリリイベを見に行って、初めてでぼっち参戦なのに無茶しやがって一日ぶっ通しで見たんですけれど、アンジュルムというグループの未来には輝かしいものしか見えませんでしたし、そんななかで迎えた卒コンは、やっぱりわたしのちっぽけな期待なんて掻き消してしまうくらいに、すばらしく魅力的なものでした。「ああ、めいめいの選択はこれ以上ないくらいに正しいのだ」と、不覚にも納得してしまったのです。

わたしが初めて見たハロプロ卒業コンサート道重さゆみさんのそれで、道重さんがあのとても美しいばらのドレスをお召しになっているのを見て、「女の子のアイドルが卒業するときのお衣装は、世界でいちばんきれいなお姫さまになるためのものなのだ」と思いました。花音ちゃんの卒業ドレスを見たときも、おなじことを思いました。けれど、めいめいのあのすばらしくすてきな水玉のドレスは、めいめいがお姫さまになるためのものではありませんでした。めいめいはいつだって、わたしたちの想像の向こう側に、そのすべての魂をかけて走ってゆくひと。めいめいのドレスは、めいめいが世界でいちばんのミュージカル女優さんになるための、めいめいが未来へ向かって飛び立ってゆくための、めいめいの大いなる夢のためのお衣装だったのでした。

 

もう止めたりできないよ、めいめい、いってらっしゃい。

 

ジャニーズアイドルに歌ってほしいあの高樹詞この高樹節~堀込高樹作詞トニセン曲「不惑」発表に寄せて~

 

とんでもないニュースが飛び込んできた。

V6新作、トニセン曲はKIRINJI堀込高樹が作詞の「不惑」 - 音楽ナタリー

 

あの高樹が、男性アイドルの、ジャニーズの、V6の、トニセンの作詞をやるだって???!!!?!?!?!?!?!!?

 

神はわたしをお見捨てにならなかった!

生きているうちにこのような恵みにあずかることができようとは。

なんたる幸福!なんたる奇跡!

わたしはスマホを強く握りしめながら、事務所だとか、レーベルだとか、とにかくわたしの知りえぬ大いなる力に感謝した。

 

熱心でもないが信仰といえるほどの強さで、わたしは堀込高樹の作る音楽を愛している。

堀込高樹は1996年から2013年まで弟・堀込泰行キリンジとして活動した。現在はKIRINJIと改め6人組バンドを結成している。以下は兄弟時代の楽曲。

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多様な音楽性を見せる高樹の作風をおそれおおくもひとことで表すとするならば、「偏屈」である。

わたしはとりわけ大学時代、キリンジばかり聴いていた。英雄的でなく、幻想的でないひねくれた恍惚は、当時のわたしの求める最上の音楽であった。

しかしまもなく弟・ヤスの脱退が発表され、埋められぬ寂しさを抱えつつネットを徘徊していたわたしは、NONA REEVESの名前からこのインタビューにたどり着くことになる。

V6「kEEP oN.」西寺郷太&corin.インタビュー (1/4) - 音楽ナタリー Power Push

Sexy.Honey.Bunny!」「kEEP oN.」を手がけた「にしこりコンビ」。V6再ブレイクの立役者として、この二人の名前を知らないファンはいないだろう。

この記事そのものがアイドル音楽への愛に満ちた名インタビューであるが、わたしが驚いたのは冒頭で西寺さんが語っているこの箇所である。

そもそもイノッチってキリンジとかTRICERATOPSとかノーナとか、ま、あえて言うけど“通”が聴くような音楽にものすごく詳しくて。

ほう、と興味を持ったわたしはセクバニを聴いて度肝を抜かれ、キーポンの奇曲っぷりに混乱し、イノッチ=井ノ原快彦=あさイチのアナウンサーだと思っていた人、ということに気づいてさらに動揺した。

そのうえ追い打ちをかけたのは、西寺さんのラジオに井ノ原さんがゲスト出演した際に披露された弾き語りである。

なんという上質な歌声!なんという繊細な技巧!このように品の良い歌唱をするジャニーズがこの世に存在したとは。しかも、あの「あさイチの素朴な顔の人」が!(各方面にお詫びします。)

どうにもアイドル歌唱に苦手意識の強かったわたしが、ものの見事に心臓をブチ抜かれてしまった瞬間であった。

このことがきっかけでわたしは不用意にもジャニーズの岸辺にうっかり近寄ってしまい、果てにはメジャーアイドルという大海にぽうんと投げ出されてしまうことになったのである。

 

ところで、これまでに高樹とジャニーズに全く接点がなかったわけではない。

高樹は過去に2度、SMAPに作曲提供しており、『BIRDMAN』に収録の「idea」、そして『S map』に収録の「愛の灯 〜君とメリークリスマス〜」がそれである。

両曲ともにファンが聴けば「めっ高樹~~~!!!」と叫びたくなることうけあいの複雑怪奇なメロディーラインが特徴である。

そのせいか(特に後者は)やたら木村さんのソロパートが目立ち、また吾郎ちゃんのダンスはたいへん窮屈そうな仕上がりとなっている。(なおわたしは吾郎ちゃんのダンスが大大大好き。)

残念ながら作詞は手がけていないであろうが無理もない、絶頂期のSMAPが歌うにはあのころの高樹詞は不穏すぎた。

この2曲で高樹はメジャーアイドルへの楽曲提供に限界を感じたのであろうか、その後ジャニーズとの縁は途絶えてしまった。

またどこかしらのインタビュー記事で、インタビュアーが楽曲提供について水を向けたものの、アイドル楽曲との相性の悪さを口にしていたこともあった。

 

まあそんなわけで、盲目的な高樹信者であり、V6と井ノ原快彦をジャニーズ音楽の入り口としたわたしが、今回のことに乱舞しないわけがない。

半ば諦めの気持ちでいたことが、ついに実現した!しかも今回は作詞提供、高樹の男性アイドル観を見ることのできる初めての機会なのである。

2016年5月9日現在、わたしたちが知りうるのは「不惑」という曲タイトルのみであるが、もう、これだけで高樹ファンは垂涎ものである。

不惑」!ジャニーズアイドルの楽曲で「不惑」って!もう最高!既に最高!高樹最高!という狂いっぷり。

その溢れんばかりの「高樹感」を受けとめ、自分のものとして昇華しきれるジャニーズアイドルなんて、井ノ原快彦を擁するトニセンのほかにはないのである。

 

と「不惑」への期待をはちきれんばかりに抱え込んでいる現在なのであるが、ここまではあくまで前置き。長々とお待たせいたしました。

この記事でやりたいのは要するに、大好きなジャニーズに歌ってほしい大好きな高樹詞はこれだ!!!という安易な妄想大会である。

この妄想はジャニーズにはまった当初からわたしの脳内を占有していたが、思ったより早く絶好の機会が訪れてしまったため、ここいらで一丁暴露大会を催してしまおうという趣向だ。

そのなかで高樹詞の世界観を端的に言い表してしまうことには抵抗があるのだけれども、そんなみみっちいことをほざいていては紹介のしようがないので、どうか主観的な解釈として受け流していただきたい。

誰が楽しいかって、ほかでもなく、わたしが楽しい。

 

 

SMAP 「涙のマネーロンダリング

高樹には珍しくわりとストレートなロック調、で内容は若い女(おそらく水商売)に貢ぐ男の「純愛」の歌。

「欲しいものをあげる 飽きるまで何度も それを『愛ではない』なんて言わせない」とSMAPおじさんたちに歌わせたら、なんという説得力!

「フェイクファーに埋もれた柔らかな頬 守りたいだけさ」という印象的なパートは木村さんにゴージャスに歌唱してほしい。

稲垣吾郎「メスとコスメ」

その昔フィッシュマンズの佐藤さんにソロ曲を作ってもらうこじらせっぷりを発揮していた吾郎ちゃん、きっと高樹曲も歌いこなしてくれるに違いない。

簡単に言ってしまえば再会した元恋人が整形していたみたいな歌なんですけども。

「きっとなればいい 君はなればいい 君のなりたい”本当”になればいい」吾郎ちゃんにぴったりの台詞。

 

TOKIO「繁華街」

(※高樹ではなくヤスの作詞作曲であるとのご指摘がありました。ご不快に思われたかたがた本当に申し訳ございません!恥を知れ!)

古風でムーディーなサウンドに、しっくりと静かなメロディーライン、「珠玉の街」で始まるサビが美しい曲。正直に言います、城島リーダーのイメージです。

「俺は傘を欠いたまま 在るだけの噂を買い占め 夜更けへ挑む」なんていうハードボイルド、リーダーにぴったりとしか言いようがない。

 

▼V6「都市鉱山

奇曲まみれのキリンジのなかでもとりわけ珍奇な一曲。

ライブではテンション爆上げ曲。ダンス映えもしそうだし、これを表現できるのはキーポンを我が物としたV6兄さんしか考えられない。

高樹史上最高にキレた歌詞「いらなくなったPCおくれよ はずかしい画像は消したか?」はぜひ三宅さんに歌ってほしいなあ。

最後の元素記号連呼するところも、アイドル現場でやったらめちゃくちゃ楽しいだろうなあ。ホルミウムタンタル!ランタン イッテルビウム

▼井ノ原快彦「ハピネス」

本事件の中心人物こと井ノ原さんには、既婚者が女という生き物をしずかに哀れむこの歌詞を。ゆったり洒落たサウンドも彼の声質にぴったりかと。

「知るかよ!」「笑わせるなっつうの!」の名フレーズをしっとりと歌い上げてほしいし、「ハピネスはピンクのシャンパンの泡のようなものだと君は信じてるの?」なんて見下してほしい。

 

Kinki Kids「いつも可愛い」

シティ・ポップの寵児ことキンキ先輩がキリンジを歌って楽しくないわけがない。

とはいえ声質の問題でなかなか選曲が難しいが、このゲンズブールふうのねっとりとした曲調はしっくりくるのではないだろうか。ふわふわ甘いメロディーラインにあだめいた歌詞、サビの美しいハモリなどもおあつらえ向きである。

「甘い夢だけ見ていたいね 二人のときは」

 

▼嵐「千年紀末に降る雪は」

これは以前からかなり推してる組み合わせ。サンタクロース=与える人の孤独を見つめる、高樹の詞のなかでも文学性の高いクリスマス・ソング

「恋人はサンタクロース 意外と背は低い」「『ごらん、神々を祭りあげた歌も、貶める言葉も今は尽きた。』」「君が待つのは世界の良い子の手紙 君の暖炉の火を守る人はいない」なんて、今やアイドル界において不動の地位を得た嵐さんと重ね合わせることで、またこの詞の奥行きが増すように思う。

 

タッキー&翼「エトワール」

代表的な曲調がキリンジとかけ離れているために選曲が難しいがこの曲で。キリンジ初期のプロデューサーである冨田恵一氏のアルバムに収録されている。

タイトル通りバレリーナを主題とし、ストリングスのやや大仰なアレンジ。

「愛を囁きあうパ・ド・ドゥ踊れ」「影さえも裁ち切るピルエット回れ」なんて歌詞はどこかトンチキさもあって、滝翼の得意分野ではなかろうか。

 

▼NEWS「ブラインドタッチの織姫」

実際のファン層はもうすこし若いのかもしれないが、NEWSさん自身(特にコヤシゲ)に何故だかOL感が漂っているので、この選曲。

「善男善女が競う恋の技 君は腕だめしに気遅れて…」と寄り添っておきながら、サビで軽率にチューしようとするどうしようもないチャラさ。いっぽうで「この星は青くて丸い屑籠」なんてマクロ目線が入るのはアイドルソングみがあって楽しい。

シゲアキ先生もキリンジ聴いてらっしゃるんですよね。好きな曲とか知りたい。

 

関ジャニ∞「奴のシャツ」

高樹自身、若干やりすぎたと反省している程度にやりすぎた歌詞。

「ボタンを掛け違えたまま大人に」なってふらふらと生きているどうしようもない男の歌なのだが、やさぐれ男を歌わせてエイト兄さんの右に出るものはいないであろう。

やさぐれたすばるさんあたりに「姪が歯医者に行くので付き合」ってほしいし、やさぐれた丸山さんあたりに「そうさ遺産があればしばらくしのげる」と呟いてほしいし、やさぐれた大倉さんあたりに「親父の通夜で絡まれ」てほしい。

 

KAT-TUN「悪玉」

一貫してスタイリッシュでかっこいいヒールを演じてきたKAT-TUN、そろそろダサくてかっこわるいヒールも歌ってもらえるんじゃないだろうか。

「ギリギリでいつも生きていたい」とデビューした彼らが「捨て身の奴に負けはしない 守るべきものが俺にはあるんだ」と歌ったらばものすごいカタルシス

それにさ、上田さんはボクシングやってるからな(それが言いたかっただけ)。ちなみに中丸さんの歌声は井ノ原さんと1、2を争うほど高樹詞と相性が良いと思う。

「マイク寄越せ早く!」とわちゃわちゃしあうのも想像できていいね。

田口淳之介イカロスの末裔」

デリカシーがなくてたいへん申し訳ないのだが削れなかった。

脱退を発表する前からずと考えていたんですけれど、キリンジにしては陽気で軽やかな曲調にかわいらしくも皮肉のきいた歌詞が乗っかったこの曲。

あのどうしようもなくふわふわとした微笑みを浮かべながら「キスを見舞うぜベイビー」「林檎が腐ってなければいいね」なんていちいち語尾に♪マークをつけて歌ってほしい。

今となって改めて歌詞を見ると図らずも「これで浮世と暫しのお別れさ」「遠くまで行けるかな 堕ちるすべなら皆心得てる」なんかが刺さる。

 

▼Hey!Say!JUMP「今日も誰かの誕生日」

ライムスターの宇多丸師匠がSMAPに歌ってほしいと言っていたこの曲であるが、この真っ当さとキラキラ感、現在の位置的にはJUMPが歌っても良いのではないだろうか。かわいいかわいいJUMPちゃんたちがお誕生日パーティーを開くMVでよろしく。

あえていうなら「世界は憂鬱 いつでも残酷」は知念さんに、「だけど今夜は最高」は有岡さんに、「あなたが優しく蝋燭を吹き消せば」は薮様に歌ってほしいかな。

▼中島裕翔「わたしの青い空」

裕翔りんを好きになったきっかけって実をいうと、藤井隆さんに声質が似ているなあと思ったところからなわけで、まあわたしの都合の良い耳のせいであって実際はさほど似てないのだけれども、とにかく藤井ちゃんの曲はまるっと裕翔りんに歌ってほしい。

高樹が藤井ちゃんに提供してる曲は4曲(うち1曲は作曲のみ)あって、迷うけれどやっぱりこれかな。裕翔りんならこの素晴らしい曲と素晴らしいMVを、無表情で低体温に再現できるだろう。それはそれは奇妙で愉快でお美しいのだろうなあ。

裕翔りんに「卒業 誕生日 迎えるたび君の値打ち下がるなんて 馬鹿だな」なんて歌われるその想像だけで軽く昇天できる。

▼伊野尾慧「かどわかされて」

これも以前からツイッターでわりとうるさく言っているんですが、サビの「かどわかされた他愛のない審美眼 甘い誘惑 溜息まじり あばずれの毒(プワゾン)」だけでもうめちゃくちゃ伊野尾さん。

伊野尾慧の魅力にかどわかされる人が後を絶たない現在、この曲をなんでもないように、鼻歌みたいに歌ってほしい。

 

Kis-my-Ft2「Golden harvest」

高樹自身が自画自賛するできばえのこの曲、とにかくコード進行とメロディーラインが難解すぎるが、歌詞は比較的ポジティブで爽やか、かつ詩的で美しい。

「明日になったらきっと誰もが君の正しさに頷くだろう」「実りの季節にきっと誰もが讃えるだろう君のsuccess」なんてちょっと強い歌詞も、キスマイにはそのくらいのストレートさが合う。

 

Sexy Zone「君の胸に抱かれたい」

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高樹にしては珍しいハッピーソングかと思いきやそう一筋縄にもいかないんですけれども、「君をこの腕でつつみたいんだ」と歌った直後「君のその胸に抱かれたい」とくるその矛盾はSexy Zoneっぽいなあと。

「君は泣くふりも素敵だ 姿のいいひとよ」なんてマリウスちゃんに歌われたらどんな感情になったらよいのかわからない。

中島健人「十四時過ぎのカゲロウ」

「水辺の生き物だから陸では生きてゆけない気がしている」でふと浮かんだのがケンティーさんであった。ケンティーアイドル道はスポーツ選手のストイックさそのものだ。

「欲しいものは見えている」なんていう貪欲さも。

 

A.B.C-Z「自棄っぱちオプティミスト

A.B.C-Zの明るくポップな持ち歌がとても好きなんですけれども、この曲くらいの脱力感あるポジティブさも楽しそう。

えびさんたちが住宅街とかのなんでもない通りをふらふら歩きながら「この町の景色をもっと君が愛したのなら世界は変わる」なんてのんびり歌うMVが浮かんでくる。

「流れ星を見逃しても」「昨日の涙はstar dust」なんていう星モチーフが多いのもぴったり。

 

ジャニーズWEST「クレゾールの魔法」

病院で出会った風邪ひきの女性にフェチを感じている、高樹お得意の変態歌詞。

洒落たピアノ伴奏がかえって腹立たしいのだが、ラジオ等でなんともいえない誰得な妄想をたびたび披露しているWESTさんたちにニヤニヤと歌ってほしい。

中間淳太「ロマンティック街道」

以前WESTに歌ってほしい曲アンケートみたいなのをやっていて、これを投票して浮きまくっていたのはわたしです。

はやく結婚したい、なんて年中ぼやいている系アイドルお淳太さまにこの曲を、とはいえ結婚までに実らなかった恋の歌なんだけれども。

「孔雀のように誇らしく生きてゆきたい」に夢抱きの衣装を連想したなんてそんなことはない。たぶん。

 

▼すべてのシンメに「耳をうずめて」

高樹詞のなかでも難解を極めるこの曲、兄弟自身のことを歌っているとする解釈が一般的なのかな。

ひとりがふたりになる、その出会いを極めて静かに、低い体温で歌ったものであるが、普遍的なシンメソングですらある。

「僕ら音楽に愛されてる、そう思うのか?」なんていうドキッとするような問いかけを、すべてのシンメたちは、そしてシンメを持たないアイドルたちは常にどこかへ投げかけ続けているのだろうなあ。

 

 

楽しかった~~~~~!!!!!!!!!

好きなものと好きなものを組み合わせるのってほんとう楽しい!オタクやっててよかった!

ともあれ「不惑」、とってもとっても楽しみにしています!