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ヴァニタスの導き――映画『ピンクとグレー』感想

ブラボー!

 
映像が暗転し、「中島裕翔」という美しい名前がそこに浮かび上がった瞬間、わたしはまるで交響曲の最終楽章を聴き終えたときのようにすっくと立ち上がり、心からの祝福と愛を込めた盛大な拍手を贈り……そうになるのをぐっと堪えていた。正直なところ、そのような幸福な気持でこの映画のエンドロールを迎えることになろうとは、全く想像だにしていなかった。
 
本日2016年1月9日公開、中島裕翔初主演映画『ピンクとグレー』の感想を述べる前に、いくつかことわっておかなければならないことがある。ひとつ、最も重大なのは、わたしは加藤シゲアキの原作を一文も読まないままに映画を鑑賞したということである。愛しの裕翔りんが原作読後の鑑賞を勧めなさっているのは承知していたし、公開に先んじて映画を鑑賞したファンのかたがたが口々に原作を先に読んだほうがよいと言っているのももちろん目にしていた。それでもわたしが頑なに原作を読まなかったことに確固とした根拠があったわけではないが、敢えて述べるとするならば、わたしは原作厨になってしまうことを恐れたのである。むろん原作ファンを批判しているつもりは全くなく(むしろこの小説の成り立ちを考えるに当然の感情である)、「物語どうこうよりもまず映像作品としての美しさを満喫したい」というわたしのよこしまな思考のせいなのだ。これは常々わたしの感受性の乏しさを露呈してきた"ヘキ"であるが、今回の映画にあたってもその悪習を断ち切ることはできなかった。その選択が正しかったとは言えないが、すくなくとも脚本への葛藤を排除して映画を鑑賞することには成功したのだと思う。
ふたつめに、わたしは原作に全く触れていないのにもかかわらず、映画についてのネタバレをまるで回避することなく今日の日を迎えた。裕翔りんや菅田くんのインタヴューは可能なかぎり目を通していたので、核心的なものを見たわけではないにしろ、「62分後の衝撃」とやらはなんとなしに想像できてしまっていたのである。
さいごに、わたしは中島裕翔のファンでありながら生の裕翔りんを目にしたことがない。1年以上前からアイドルにはまっているくせして、Hey!Say!JUMPどころかどんなアイドルのコンサートにも行ったことがない。映像の中の裕翔りんしか知らないわたしは、おそらく今回彼が演じたさまざまな場面から生じる衝撃を、生の裕翔りんを知っているファンほどには鮮やかに受けとめることができなかったのではないかと推測する。おまけに、わたしが夢中になった中島裕翔は既に『ピンクとグレー』を撮影し終わったあとの、アフターピングレ裕翔りんだったのであるからなおさらである。
このように筆者は中島裕翔ファンとしても映画ファンとしても非常に不誠実な鑑賞者であるということを前提しておく。
 
さて長ったらしい言い訳を並べたてたところで、まずはなによりも俳優・中島裕翔という才能の甘美なる勝利について語らなければならない。このような表現をすると批判を招くであろうが、この映画は俳優・中島裕翔のプロモーション作品としてまさに完璧なものである。中島裕翔という奇跡の美貌を持った青年が、すみずみまで美しく切り取られているのは言うまでもない。笑う、泣く、歌う、殴る、走る、煙草を吸う、首を吊る、セックスをする、そのすべてがうっとりするほど美しい。菅田くんが言うところの裕翔りんの「いろいろさせたくなる魅力」が、これほど十二分に活かされきっているとは!ひとつの作品のなかでいち役者の多様性をこうも引き出している映画は稀ではないだろうか。そしてなによりも、中島裕翔は若手ジャニーズ俳優としての殻をこれでもかと砕いて見せた。こんなにも真っ当に、情熱的に人間の闇を表現してくれる姿勢はアイドル俳優にとって非常に度胸を要することであろう、わたしたちが想像するよりもずっと。一部で議論を呼んでいる「ジャニーズらしくない俳優になりたい」という裕翔りんの覚悟、それをいままさに目に焼き付けることのできる幸福感といったら!
加えて、この映画の特徴的な構造は、中島裕翔というアイドル自身の性質をも浮かび上がらせる。ジャニオタなら誰もが心打たれずにはいられない、スーパーエリートから苦渋の日々を乗り越えて返り咲く物語。そしてわたしたちを混乱させ夢中にさせる、無邪気でありネガティヴ、人懐っこく内向的、真面目かつ奇抜、のびやかかつ繊細、といった相反する性質の共存。『ピンクとグレー』でごっちでありりばちゃんであるこの役は、そのようなアイドル中島裕翔の魅惑的な多重性すらも内包しているのである。わたしはこの映画が始まる前、アイドルファンとしての自分は排除して鑑賞しなければならないと思い込んでいたが、そんなことは不可能であったし、必要性もなかった。監督の意図するところとは異なるかもしれないが、この映画はアイドル映画として確実に成功しているし、そのうえ、なにをさせても絵になる裕翔りんの類まれなる才能をたちまち誇示することのできる、まさに俳優・中島裕翔の名刺となりうる作品である。
 
ああ、それにしても演技がお上手でいらっしゃる!前半のしなやかで強かで圧倒的なほど正しい美しさもみごとであったが、後半の痛々しいほどの可憐さといったら、何度も「じゃんぷちゃんはやく誰でもいいから裕翔りんのこと抱きしめてあげて、後生だから!」と願ったほどであった。最後に抱きしめられたときはほっとした。贔屓目を抜きにしても、中島裕翔の役者としての才能は眩いばかりであり、ますますその名を世界に轟かせていくことはまずまちがいない。個人的には、高校生時代の菅田くんが夏帆ちゃんを押し倒してしまうシーンでの裕翔りんの笑いかたが絶品であったと感じる。バランスの難しいシーンだがなんともほほえましい後味となっていた。
裕翔りんの歌声担としてはなによりもファレノプシスの歌唱シーンが嬉しかった。裕翔りんはあまり歌のうまくないほうだと認識されているが、あの歌唱シーンでは裕翔りんの極上のマットな声質と、上品で素直な発音、そしてやわらかく儚いファルセットを堪能でき、裕翔りんの歌声の可能性を存分に示すことができたのではなかろうかと思う。かねてより裕翔りんの歌声を強く支持してきたわたしは、内心で拳を振りかざし勝者のポーズを取らざるをえなかった。
お色気シーンはとても良かった。わたしはアイドルにはまるまでに今まで好きになった芸能人といえば15歳は年上のオッサンばかりであったので、若いアイドルのお色気シーンに不安になる気持はよくわからなかったのだが、とはいえ実際見てみたら複雑な気持を抱くのであろうかと心配していた。しかしおっぱいまみれのシーンには思わずニヤニヤとした気味の悪い笑みを浮かべてざるをえないほど興奮したし、セックスシーンは短すぎてよくわからなかったが裕翔りんの背中の美しさが印象に残った。先日の夜会からゆとかほに沸いていたので、セックスシーンの夏帆ちゃんが悪女モードだったのが無念でならない。
 映画作品そのものについても、適度なスピード感とこなれ感があり、映像は美しく、美術も(肖像画のほかは)造りこまれていて、非常に安心して見られるエンターテインメントだった。脚本についてはどうしてもいささか懐疑的にならざるをえないが(結局死者の亡霊との対話でしか昇華できないのかよ、というツッコミは原作を読めば解消するのであろうか)、テンションの下がるようながっかりシーンはひとつも無かったし、クライマックスのシーンでは哀しみに包まれているはずなのに自然と笑みがこぼれてきてしまうような、不思議な感覚を味わうことができた。泣きながら抱きしめられ色を取り戻していく裕翔りんの美しさは筆舌に尽くしがたい。
そして恥ずかしながら今をときめく菅田将暉の映画での演技は初めてみたのだが、裕翔りんの言葉どおり、真性の怪物である。後半の菅田くんの演技を見て好きにならない俳優ファンがいったいどれだけいるというのだろう。裕翔りんに殴られるシーンなどは圧巻で、このようなすばらしい俳優に愛され、褒め称えられる裕翔りんがいっそう誇らしい。願わくばすだゆとの友情が長く長く続きますよう。またふたりの共演がすぐにでも見られますよう。
 
ああ!もっと言いたいことが、言いたいことがあるはずなのに胸がいっぱいでどうにもならない!口惜しい!このように散らかった文章を投げつけるばかりで恐縮至極であるが、この数か月わたしの生きる目的であった『刑事バレリーノ』ももうすぐはじまることだし、このあたりで思考に区切りをつけなければ心臓が持たないのだということにご配慮いただきたい。とにもかくにも、ファンに愛され、メンバーに愛され、スタッフに愛され、原作者に愛され、共演者に愛され、そして神に愛される裕翔りんの初出演・初主演映画がこのように愛に満ちた良作品であったことが、わたしにとって幸福いがいの何だというのであろうか!
中島裕翔の美に祝福を!映画『ピンクとグレー』に喝采を!
 
 
 
 
・初回上映を観にいったのだが、キャピキャピした服装の若い子集団ばかりで、ジャニオタが集まる空間に初めて赴いたわたしはド緊張した。キャピ子ちゃんたちは前を通ろうとしてもかばんを避けてくれなかったし、エレベーターに乗っても後の人のために開ボタンを押してくれなかった。若いってすごい。ますますコンサートに行くのがこわくなった。
・上映前の予告がほんとうに100%ジャニーズ映画でおもしろかった。山田さんが出てきたときはそうでもなかったのに、おケンティーさんが出てきた瞬間観客が色めきたったのにはさすがとしか言いようがない。おケンティーさんと千葉くんの壁ドンシーンにはしてやられた。
・そんな賑やかな場内だったのに映画が始まった途端しんと静まり返っていて、セックスシーンでもかすかに息を呑む音がきこえた程度。最後まで快適に鑑賞を終えることができた。裕翔りんのファンはすてきだなあ。