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拝啓、自担様(1)  想いは想いのままで

拝啓、堂珍嘉邦様。

 

はじめてお手紙を書かせていただきます。

不躾ですが、わたしはあなたの、そしてあなたと川畑要さんによるボーカルデュオ・CHEMISTRYのファンをしていました。

それも振り返れば、もう5年あまり前のことです。

それだのにどうして今更、あなたへの思いをこうしてしたためようとしているのか。

それは、あなたがわたしにとって「最初の自担」であることに、ふっと気がついてしまったからなのです。

 

わたしは一年半ほど前から、アイドルのファンになりました。

なかでも、ジャニーズ事務所のアイドルグループに入れ込むようになりました。

それはわたしの個人史において、たいへん革命的で、なおかつ受け容れがたい事件でありました。

わたしはその事件に至るまでの自分の心境の変化をどうにか紐解いて、わたしの自意識を説得しようと試みています。

そこでわたしの趣味趣向の変遷を順々に手繰り寄せてゆくと、辿り着くのはいつもあなた、堂珍嘉邦という結び目だということが、どうしても無視できないのです。

 

この5年間というもの、包み隠さず正直に言ってしまえば、わたしはあなたがたのファンであったことを忘れようとしていました。

いわゆる黒歴史として、記憶のかなたに葬ってしまおうとしていました。

なんと恩知らずなことでしょうか。

しかしこの年齢になって、アイドルのファンになった今だからこそ、あなたがたのファンであった過去の自分のことを見つめ直せるのではないかと思っているのです。

そう、このブログは自分のためだけに、自分の音楽や芸能への気持ちを整理するためだけに書き綴る気色のわるいポエムです。

数々の非礼を連ねること、どうかお許しください。

 

 

子どものころ、わたしは、趣味が無いことがコンプレックスでした。

まして好きな芸能人なんてずっといませんでした。

両親があまりバラエティー番組に好意的でなかったことも一因かと思いますが、わたし自身も、学校で友だちが話題にしているチャラチャラとした番組の類には、ちっとも興味がありませんでした。

一世を風靡していたモーニング娘。でさえも、知っているメンバーは後藤真希さんとミニモニ。くらいなものでした。

中学生になると吹奏楽部に入って楽器を始め、ようやく打ち込めることを見つけたのですが、そのくせ音楽そのものには相変わらず無関心のままでした。

同級生たちが演奏曲の候補として持ち寄ってくる流行りのポップスも、好き嫌いはなんとなしにあったものの、自分からCDを買ったりなんて、思いつきもしませんでした。

当時勢いのあったKAT-TUN、NEWSなどのジャニーズグループには(というより、彼らの長ったらしい襟足たちには)嫌悪感すら抱いていました。

 

はじめ、あなたがたのファンだったのは兄でした。

自分から音楽を聴くことがなかったわたしにとって、正反対の性格のミーハーな兄は最も身近な情報源だったのです。

兄はよく車の中でCDをかけたり、家の中で大声で熱唱したりしていたので、CHEMISTRYの音楽は自然と耳に入ってきていたのですが、別段好き嫌いを感じていたわけでもありません。

その受動的な摂取がいきなり、能動的な「好き」に変わったのは、ある曲がきっかけでした。

地図にない途を求め 迷い合ってもいいだろう

擦り減らした思い出は しまいこんで笑い合い

傷ついて 閉ざされても 誰かと出会えるのなら

歩いてく 振り返れば今も あの日の僕らが霞む

CHEMISTRYの3rdアルバム『One×One』の一曲目に収録されている「Us」です。

今となってはこの曲のどこがまったく不感症なわたしの琴線に触れたのか、どうにも思いだすことができませんが、今でもこのサビを聴くと胸が熱くなります。

 

それからわたしは、兄のコレクションの恩恵を受け、一気にCHEMISTRYの曲を聴き漁りました。

中学二年生の秋頃のことだったと記憶しています。

歌手というものに興味を持ったことがいちどもなかったため、当初まるで違うあなたがた二人の声を聴き分けるのにも苦労していました。

まず間違いなく二人の声を識別できるようになったころ、わたしはちょうど15歳年上のあなた、堂珍嘉邦さんに心底惚れぬいていました。

マットではかなげな、それでいてしなやかに艶めいた、ベルベットのように美しい最高級の歌声。

くっきりとした目鼻立ちに、気品ある甘やかさと大人の男性の渋みをのせた、そこいらのアイドルに勝るとも劣らないルックス。

そしてそんな煌びやかなアウラとは裏腹に、のんびりとマイペースで、抜けていて大雑把で、格好つけるのが下手な広島の兄ちゃん的気質。

すべてが魅力的でした。

自分の世界の小ささを自覚しつつ、あなたが世界一の歌手だと疑いませんでした。

あなたはわたしがはじめて惚れ込んだ歌手であり、芸能人であり、そして今考えてみると、はじめて好きになった「アイドル」でした。

そう、あなたはわたしにとって「最初の自担」であったのです。

 

ここでは「アイドル」や「自担」の定義について深くは言及しませんが*1、ただジャニーズやハロプロのアイドルを応援しているときの気持ちと、あなたを応援していたときの気持ちに、少なからず似ているところがあるということは無視できません。

自分の冷静な部分では、もっと高いスキルを持った芸能人は世界に数多いるとわかっているのに、それでもあなたを世界一だと思い込んでやまない、ある種の信仰心にも似た気持ち。

むしろ、他の芸能人に目移りしてはならないという盲目さ、独りよがりな「担当としての責任感」のようなものは、若さゆえの純粋さのためか今よりも強く抱いていたように思います。

またあるいは、わたしにとっての自担が疑似恋愛の対象にならないという価値観も、このころからのものでした。

そのころ既にあなたは結婚なさっていて、お子さんもいらっしゃいましたし、それもあなたの魅力のひとつでしたから。

しかし当時のわたしは、あなたを好きになったがゆえに、アイドルに対する視線がいっそう厳しくなってしまっていたたことは事実でした。

「最初の自担」ことあなたが、あれほど美しくてあれほど歌がうまい人だったのですから、アイドルを好きになれるまでに時間がかかったのはしかたのないことだなあ、と我ながら思うのです。

ええもちろん、今はアイドルの魅力を十二分に思い知ったうえで申し上げているのですが、「ジャニーズなんて堂珍さんよりも歌が下手でブサイクで下品な曲ばかり歌っているのに、どうして!」と若さゆえの対抗心を燃やしていました。

 

閑話休題、わたしはあなたがたのファンであったあいだに四回、ライブにうかがいました。

そのなかでもとりわけ思い出深いのは、2010年に行われた『regeneration』ツアーです。

なんといっても、踊るCHEMISTRY、踊る堂珍嘉邦の登場は、まさに革命的なできごとでありました。*2

あなたがその容姿の美しさを活かし、川畑さんがその身体能力の高さを活かしたダンスパフォーマンス。

先ほどあなたがたのことをアイドルと並べて表現しましたが、ダンスをすること、すなわちよりアイドル的な方向性にシフトすることには、少なからず葛藤があったものと推察いたします。

現在ほどインターネットに染まっていなかったわたしの情報収集能力でも、ファンからの賛否両論があったことは確かでした。

しかし、わたしは持ちうるすべての武器を備えて苦しい時代を戦う30代のあなたがたが、なによりも魅力的に見えました。

 All My Love すべて君に捧げよう

Yes! Baby Baby その微笑みが答えさ

ソロ曲『ALL MY LOVE』で、あなたは甘く優しくやわらかな声質を封印し、強く高らかに吼えました。

伸ばしていた髭を剃り、華やかな衣装を着て、しなやかに舞うあなたの美貌に、わたしは歓喜しました。

「その微笑みが答えさ」と!

 

しかしわたしがあなたがたの活動から離れてしまったのは、10周年ライブに参加してまもなくのことでした。

あまりに強く匂わせていたので、活動休止の発表があってもちっとも驚きませんでした。

わたしは大学のために一人暮らしを始め、音楽の世界を少し広げたことで、あなたがたに固執する気持ちは驚くほどはかなく消えてしまいました。 

それからわたしはあなたがたを好きだったという事実を忘れようと努めました、いいえ、ほとんど忘れていたといってもいいくらいでした。

しかし最近になって、アイドルを応援しはじめてからというもの、無意識にあなたを基準にしている自分に気がつくことがあるのです。

あるアイドルの歌を聴いて、あなたの歌声と似ていたことから好きになり、たびたび脳内でCHEMISTRYの曲を歌っているところを妄想してみたり。*3

あるアイドルの写真を見て、あなたの写真と似た構図であることにドキリとし、並べてみるとそもそも顔立ちがよく似ていることに気がつき、自分の好みの揺るぎなさにため息をついたり。*4

お恥ずかしいかぎりですが、わたしはアイドルファンになった今でも、ずっとあなたの幻影を追い続けているのかもしれません。

 

昨年の5月、わたしはあなたが水曜歌謡祭の特番で、NEWSの増田さんといっしょに歌っているところを拝見しました。

あなたに夢中だったあの頃には到底思いつかなかったような心境で、わたしはそれを鑑賞しました。

あなたは変わらず、むしろいっそう美しく、格好良くなっているように映りました。*5

それを穏やかに認めることができるようになって本当によかったとつくづく思います。

あなたを好きになってよかった。アイドルを好きになってよかった。

あなたは永遠に、わたしの「最初の自担」です。

 

でもね、やっぱりわたしは、あなたがたお二人の化学反応を、もういちどだけでいいから見てみたいのです。

 

 

かしこ

「指先に触れては感じる懐かしい痛みが」まだ残っているあなたのファンより

 

*1:アイドルグループとしてのCHEMISTRYというテーマについては改めて書いてみたいと考えてはいるところです。

*2:regeneration=革新、改造、再建、など。

*3:中間淳太さんのこと。

*4:中島裕翔さんのこと。

*5:金髪がたいそうお似合いでしたが、いまは黒髪のようです。